明 細 書 セルロース ドープとその製造方法 技術分野
本発明は、 セルロース ドープに関する。 よ り詳細には、 本 発明は、 苛性ソーダ水溶液及び該溶液に溶解したセルロース を包含してなるセルロース ド一プであって、 苛性ソーダ濃度 ( C N a ) が 6 . 5 〜 1 1 重量%であ り、 セルロース含有率 ( C c ) が 4 〜 1 2 重量%であり 、 該 ドープのゼロ剪断粘度 ( ?7。) 、 セルロース含有率 ( C c ) 及びセルロースの粘度平 均重合度が特定の関係を満足する こ とを特徴とするセルロー ス ド一プ、 およびその製造方法に関する。 本発明のセルロー ス ドープは、 重合度の高いセルロースを高含有率で含む場合 でも安定であ り 、 ゲル化を起こさない。 また本発明のセル口 一ス ド一プを用いる と、 実用に耐える機械的強度を有する繊 維やフィ ルムなどの再生セルロース成形品を、 有毒物質を大 量に用いる こ となく 、 製造するこ とができるので、 工業的に 極めて有利である。 また本発明は、 上記セルロース ドープを 凝固処理に付して得られるセルロース成形品、 および上記セ ルロース ドープを製造するために用い られるセルローススラ リ ーにも関する。
従来技術
セルロースは、 多数の D _ グルコース ( D — ダルコ ピラ ノ —ス) 分子が 3 — 1 , 4 結合を介して直鎖状に結合した構造 を有する多糖であ り 、 種々 の用途に用い られている、 工業的 に極めて重要な物質である。
セルロースの重要な用途の一つ と して、 いわゆる再生セル ロース成形品の原料と しての用途を挙げる こ とができる。 再 生セルロース成形品は、 セルロース を適当な溶剤に溶解して セルロース溶液を得、 得 られたセルロース溶液を適当な化学 的処理に付すこ とによっ て凝固させる、 という 方法によって '製造さ れる 。 しか し、 セル ロ ース は水に も通常の有機溶媒 (例えばアルコール類) にも溶解しないので、 再生セルロー ス成形品を製造するために用い られるセルロース溶液 (以降 この溶液を 「セルロース ドープ」 と呼ぶ) の製造には、 特殊 な溶剤およびセルロースの特殊な化学的処理が必要である。
再生セルロースの成形品の最も代表的な例と しては、 繊維 とフ ィ ルム を挙げる こ とができる。 再生セルロースの繊維は レー ヨ ン、 再生セルロースのフ ィ ルムはセ ロ フ ァ ンと呼ばれ 極めて広く 用い られている。 この他、 粒子状に成形された り 他の基材のコ一ティ ングに用 い られる場合もある。
また、 セルロース ドープに食用に適する種々 の成分、 例え ば多糖、 ポ リ ペプチ ドや天然樹脂などを添加したものを凝固 させる と、 セルロースを基材とする可食性成形品 (以降、 こ
のよ う な成形品を 「セルロース系可食体」 と称する) を得る こ とができる。
現在、 工業的に使用 されている再生セルロース成形品の製 造は、 主に ビス コ ース法と銅ア ンモニア法の二つの方法によ つ て行われている。
ビス コース法では、 セルロース を苛性ソーダの存在下で二 硫化炭素と反応させてセルロースキサン トゲン酸ナ ト リ ウム と し、 これを苛性ソーダ水溶液に溶解して、 得 られたセル口 ース ドープ (ビス コース) を酸性水溶液と接触させる こ とに よ り 凝固させ、 成形品を得る。
一方銅ア ンモニア法では、 セルロースを銅ア ンモニア溶液 に溶解し、 得 られたセルロース ドープを水、 次いで酸性水溶 液と接触させる こ と によ り凝固させ、 成形品を得る。
しか し、 いずれの方法においても、 セルロース ド一プ調製 工程や成形工程で、 ア ンモニア、 二硫化炭素、 重金属 (銅) などのよ う な有毒物質を多量に用いる必要があるので、 これ らの方法を実施する場所の作業環境は好ま しい ものではない また当然ながら、 上記の方法では有毒物質の回収工程が必 須であ り 、 こ の工程に不備があれば、 大量の有毒物質が環境 中に放出される こ とは避けられず、 この点において上記の方 法は環境保護の見地か ら も問題がある。
更に、 上記の方法はセルロース系可食体の製造などには適 用できない。
このよ う な方法に対し、 有毒物質を用いない、 環境に優し いプロセスで再生セルロース成形品を製造する技術に関し、 種々 の報告がなされている。 その一例と して、 セルロースを アルカ リ 水溶液、 例えば苛性ソーダ水溶液に溶解し、 得られ たセルロース ドープを用 いて再生セルロース成形品を製造す る技術を挙げ.る こ とができる。
理解を容易にするために、 セルロース ドープに関する諸特 性を示すのに用いる略語の説明を以下に列挙する。
D P c セルロースの粘度平均重合度。
C c セ ル ロ ー ス ド ー プ の セ ル ロ ー ス 含有 率 ( 重 量% ) 。 セルロース ドープの重量に対する、 セ ルロース ド 一プに含まれるセルロース の全重量
(溶解しているセルロースの重量と、 未溶解セ ルロースの重量の合計) の比率。
C N a 苛性ソーダ濃度 (重量% ) 。
S c : セルロース の溶解分率 (重量% ) 。 セルロース ドープに含まれるセルロース の全重量 (溶解し ているセルロース の重量と、 未溶解セルロース の重量の合計) に対する、 溶解しているセル口 ースの比率。
R c 未溶解セルロース量 ( m l ) 。 セルロース ドー プ 2 0 リ ッ トル中 に含まれる未溶解セルロース
の体積。 例えば、 日本国特開昭 6 2 — 2 4 0 3 2 8 号公報および日 本国特開昭 6 2 - 2 4 0 3 2 9 号公報には、 セルロースに爆 砕処理を施すこ と によ り 可溶化 (アルカ リ 水溶液に対して) した後、 アルカ リ 水溶液に溶解し、 得 られたセルロース ドー プを用 いて湿式成形を行う技術が開示されている。 これらの 技術において得られたセルロース ドープのセルロース含有率 ( C c) は 5 重量%程度である。
これ らの技術では、 二硫化炭素、 重金属、 有機溶剤などの 有害物質は全く 用い られていない。 しかし これらの技術にお いては、 セルロースが充分に可溶化されていない。
セルロース ドープか ら繊維ゃフ ィ ルムなどを製造するプロ セス にお いては、 使用するセルロース ドー プの C c が 5 重 量%以上の場合、 セルロースの溶解分率 ( S c ) を 9 9 . 0 重量%以上にする必要がある。
セルロース ドープの C c が 5 重量%であ り 、 S c が 9 9 . 0 重量%である とき、 未溶解セルロース量 ( R c ) は約 7 . 9 ミ リ リ ッ トルとなる。 上記のプロセスでは、 セルロース ド ープに含まれる未溶解セルロース を除去するためのフ ィ ルタ 一が用 い られている力 、 セルロース ドープの R c が多いと当 然なが ら こ のフ ィ ルターが詰ま りやすく なる。 そしてセル口 —ス ドープの R c が約 7 . 9 ミ リ リ ッ トリレを上回る と (換言
すれば、 S c が 9 9 . 0 重量%未満であると) 、 上記のよう なフィ ルター詰ま りが頻繁し、 繊維やフィ ルムなどを工業的 規模で製造する こ とが実質的に不可能になってしまう。
実際の製造プロセスにおいては、 5 (: を 9 9 . 8重量%程 度にまで向上させる こ とによ り 、 セルロース ドープの R c を 1 . 6 ミ リ リ ッ トル程度にまで低下させる こ とが要求される , これに対し、 上記日本国特開昭 6 2 - 2 4 0 3 2 8 号公報 および日本国特開昭 6 2 - 2 4 0 3 2 9号公報に記載の技術 によって得られたセルロース ドープでは、 セルロースの溶解 分率 ( S c ) は 9 9重量%未満に留ま り、 それに伴って未溶 解セルロース量 ( R c ) も 1 0 ミ リ リ ッ トル以上と多いため 到底実際の製造プロセスでの使用に耐えるものではなかった そこで、 セルロースを充分可溶化させ (即ち S c をよ り 向 上させ) 、 よ り R c の小さいセルロース ド一プを得るための 手段と して、 セルロースを水系媒体に分散させたスラ リ ーを 調製し、 これを用いてセルロース ド一プを調製するという方 法が提案されている。
例えば、 日本国特開平 9 一 3 1 6 1 0 1 号公報には、 次の よ うな 2 つの方法が開示されている。
1 ) 低濃度のアルカ リ 水溶液に、 粒度を調整せず、 重合度 ( D P c) のみ 7 5 0 以下に調整したセルロースを加え、 攪 拌してセルロースをアルカ リ 水溶液中に分散させる こ とによ り スラ リ ーを得、 得られたス ラ リ ーに、 最終的なセルロース
ド一プにおける最終アルカ リ 濃度が 7 〜 1 1 重量% になるよ う に、 高濃度のアルカ リ 水溶液を加えて高速攪拌し、 セル口 ースをアルカ リ 水溶液に溶解させてセルロース ド一プを得る 方法。
2 ) 水中でセルロース を粉砕して平均粒径 2 0 ^ m以下にな るよ う にする こ と によっ てス ラ リ ーを得、 得られたス ラ リ ー に、 最終的なセルロース ドープにおける最終アルカ リ 濃度が 7 〜 1 1 重量% になるよ う に、 高濃度のアルカ リ水溶液を加 えて高速攪拌し、 セルロース をアルカ リ水溶液に溶解させて セルロース ドープを得る方法。
また この公報には、 上記の方法によ り 、 セルロース含有率 ( C c) 2 重量%以上、 セルロース溶解分率 ( S c ) 9 9 重 量%以上のセルロース ドープを調製できる こ とが示されてい る。
具体的には、 D P c 2 3 0 のセルロース 8 重量% を含むセ ルロース ド一プ、 D P c 3 5 0 のセルロース 5 重量% を含む セルロース ド一プおよび D P c 7 5 0 のセルロース 2 重量% を含むセルロース ド一プが得られてお り 、 これらのセル口一 ス ドープに関 してはセル ロース溶解分率 ( S c ) が 9 9 重 量%以上である。
しか し、 上記したものよ り も D P c の高いセルロース を用 いた場合や、 上記したものよ り も C c が高いセ
訂正された用紙 (規則 91)
ルロース ドープ (例えば、 D P c 2 3 0 のセルロース 1 0重 量%を含むセルロース ドープ) を調製した場合、 セルロース が充分溶解しなかった り 、 セルロース ドープが著しく 不安定 にな り 、 ゲル化しやすく なる という問題がある。 そのような ゲル化しやすいセルロース ドープは、 当然ながら工業的規模 での使用に耐える ものではない。 従って上記の方法では、 C c およびセルロースの D P c のう ち少なく と も一方を充分に 高める こ とができない。
なお、 セルロース ド一プのゲル化は、 セルロース分子鎖の 特徴である、 水素結合の発達によるセルロース分子鎖の会合 に起因する と推定されている。 即ち、 セルロース分子鎖中の 十分溶媒和していない、 真に溶解していない部分を核として 複数個のセルロース分子鎖が会合する こ とによ り 、 系全体の 流動性が消失し、 ゲルとなる と推定されている。
一方、 D P c の低いセルロースを含むセルロース ド一プや、 C c が低いセルロース ド一プから、 実用に耐える強度を有す る成形品を得る こ とは、 通常の方法では困難である。 このよ うなセルロース ドープから実用に耐えるだけの強度を有する 成形品を得るためには、 セルロース ドープを高度な脱水作用 を有する特殊な媒体、 例えば 5 0 〜 8 0重量%の濃厚な硫酸 中で凝固させる必要がある。
また D P c の低いセルロースを含むセルロース ドープゃ、 C c が低いセルロース ド一プを用いる と、 成形品、 特に繊維
やフ ィ ルムを通常の手段で得る こ とは著し く 困難であ り 、 特 殊な手段が必要となる。 その一例と して、 セルロース ド一プ か ら繊維を製造するプロセス において、 セルロース ドープ凝 固過程の初期段階においてネ ッ 卜 を併用するプロセスを挙げ る こ とができる ( 日本国特開平 7 — 2 7 8 9 4 1 号公報を参 照) 。 しか し、 製造工程は煩雑とな り 、 製造効率も低下する これは、 凝固途中の段階にある繊維やフ ィ ルムの機械的強度 が不充分なため、 繊維ゃフ ィ ルムの製造において行われる巻 取 り な どの操作が、 通常の方法では不可能なこ と による。
また このよ う なセルロース ドープを用いて、 上記セル口一 ス系可食体を製造する場合でも、 その製造プロセスにおいて 同様に凝固途中の段階にある成形品 (可食体) の強度に関す る問題が生 じるため、 可食体の形状が制限され (例えば、 繊 維状成形品の場合は繊維径を太く する必要があ り 、 フィ ルム 状成形品の場合は厚みを増す必要がある) 、 また多糖、 ポ リ ぺプチ ドゃ天然樹脂などのプレン ド比率も低下せざる を得な く なるので、 可食体の物性、 例えば食感の改良に限界があつ た。
セルロースを水系媒体に分散してなるス ラ リ ーについては 他に も多く の例が知 られてお り 、 例えば U S P 5 , 1 2 3 , 9 6 2 にもそのよ う なス ラ リ ーが開示されている。 しか し、 このス ラ リ ーは食品添加物と して用い られる ものであって、 こ のス ラ リ ーを用いてセルロース ドープを製造し、 そのセル
ロース ド一プを用いて成形品を得る こ とを意図したものでは ない。 またこのスラ リーの製造に使用される D P c は 2 0 0 程度またはそれ以下であるため、 少なく とも通常の手段では このス ラ リ ーから実用に耐える強度を有する成形品を得る こ どはできない。
セルロース ドープの製造に用いられる こ とを意図したスラ リ 一に関しての開示は、 上記した日本国特開昭 6 2 — 2 4 0 3 2 8 号公報、 日本国特開昭 6 2 — 2 4 0 3 2 9 号公報およ び日本国特開平 9 一 3 1 6 1 0 1 号公報の他にも見られる。
例えば、 日本国特開平 9 — 1 2 4 7 0 2 号公報には、 セル ロースをミ ク ロフィ ブリ ル化する こ とによ り可溶化 (アル力 リ水溶液に対して) する技術が開示されている。 この公報に よれば、 セルロースを石臼型湿式粉砕機を用いる湿式粉砕処 理に付すこ とによ り 、 Ι μ ιη以下の繊維径を有する ミ ク ロフ イ ブリ ル数が、 全ミ ク ロ フイ ブリル数の 9 5 %以上を占める (好ま しく は、 5 0 0 n m以下の繊維径を有するミ ク ロフィ ブリ ルが、 全ミ ク ロ フイ ブリ ル数の 9 0 %以上を占める) 、 ミ ク ロ フィ ブリル化セルロースが水系媒体に分散されてなる スラ リ ーを得ている。
また、 D P c 7 0 0 程度のセルロースを上記の処理に付す こ とによ り得られたスラ リ ーと、 濃度 9 . 2重量%の苛性ソ ーダ水溶液を用い、 セルロース含有率 ( C c ) 5 . 4重量% のセルロース ド一プを調製したときの、 セルロースの溶解分
率 ( S c ) が 9 5 %程度と記載されている。
更に、 レー ヨ ン製造用のアル力 リ セルロースか ら製造した D P c 3 0 0 のセルロース (結晶型 : セルロース I I 型) を 上記の処理に付すこ とによ り 得られたス ラ リ ーと、 濃度 8 . 5重量% の苛性ソーダ水溶液を用い、 セルロース含有率 ( C c ) 7 重量%のセルロース ド一プを調製したときの、 セル口 —スの溶解分率 ( S c ) が 9 0 %程度と記載されている。
しか し上記した通 り 、 セルロース ドープか ら繊維やフ ィ ル ムなどを製造するプロセスにおいては、 使用するセルロース. ド一プの C c が 5重量%以上の場合、 セルロースの溶解分率 ( S c ) が 9 9 . 0 重量%未満である と、 繊維やフィ ルムな どを工業的規模で製造する こ とが実質的に不可能になってし ま う 。 従っ て、 上記のよ うなセルロース ドープは、 未溶解セ ルロース を相当程度除去する操作を併用 しない限り 、 実際の 製造プロセスでは使用できない。
また上記の通 り 、 日本国特開平 9 一 1 2 4 7 0 2号公報の 技術では、 石臼型湿式粉砕機を用いて、 セルロース をミ ク ロ フ ィ ブリ ル化しているが、 このよ う なセルロースを含むス ラ リ ーの粘度は著し く 高く 、 そのため、 上記のス ラ リ ーを用い てセルロース ド一プを製造する際には、 強力な剪断応力によ る攪拌が必要となる。 これは後述する通 り 、 セルロースのミ ク ロ フ ィ ブ リ ル間の相互作用 によってネッ 卜 ワークが形成さ れるため と考え られる。 しかも、 使用するセルロースの重合
度の増加に伴って、 このスラ リ ーの降伏剪断応力が増加する その結果、 使用するセルロースの重合度が高く なるにつれて よ り高い剪断応力が必要となる。 従って、 上記のスラ リーを 用いてセルロース ドープを製造する ことは非常に困難である また上記のビスコース (セルロースキサン トゲン酸ナ ト リ ゥムを苛性ソーダ水溶液に溶解して得られるセルロース ドー プ) を製造する前処理と して、 セルロースをアルカ リ水溶液 中で粉砕する こ とが一般的に行われるが、 通常このときのァ ルカ リ 濃度は 1 0 重量%以上と高い。 これは粉枠の効率を上 げるためと推定される。 しかし、 セルロースをこのような高 濃度のアルカ リ水溶液に接触させる とアルカ リ セルロース結 晶に改変される。 アル力 リ セルロース結晶はアル力 リ水溶液 に全く 溶解しないので、 上記の方法によって得られるスラ リ —は、 アルカ リ水溶液を溶媒とするセルロース ド一プの製造 に用いる こ とができない。
また 日本国特開平 4 一 3 4 8 1 3 0 号公報には、 アルカ リ 存在下でセルロースを老成させながら、 セルロース粒子を製 造する技術が開示されている。
しか し、 こ のセルロースの重合度 ( D P c ) は 2 0 〜 ; L 5 0 である。 このような重合度の低いセルロースを用いて、 実 用に耐える成形品を製造する ことは、 上記の理由によ り著し く 困難である。 その上、 老成という操作自体が、 セルロース をアル力 リ 水溶液に全く 溶解しないアル力 リセルロース結晶
へ改変する技術であるか ら、 アル力 リ 水溶液を溶媒とするセ ルロース ド一プの製造に この技術を適用する こ とは不適切で ある。
以上か ら明 らかなよ う に、 従来の方法で得たアルカ リ水溶 液を溶媒とするセルロース ドープは、 セルロースの可溶化が 充分でない こ と に伴い、
• 未溶解セルロースが多く 含まれているために、 実際の製造 プロセス における使用に耐えない
• 充分な重合度 ( D P c ) を有するセルロースが充分な量溶 解していないため、 実用に耐える強度を有する成形品を製造 する こ とができない
• 不安定で、 ゲル化 しやすい
など、 成形品の機械的特性や、 成形品の製造工程に致命的な 欠点をもた らす'問題を有していた。 発明の概要
このよ う な状況下において、 本発明者ら は重合度の高いセ ルロース を高含有率で含む場合でも安定であ り 、 ゲル化を起 こ さず、 実用 に耐える機械的強度を有する繊維やフィ ルムな どの再生セルロース成形品を、 有毒物質を大量に用いる こ と な く 製造する こ と を可能とするセルロース ド一プを開発すベ く 鋭意研究を行っ た。 その結果意外にも、 苛性ソーダ水溶液 及び該溶液に溶解したセルロースを包含してなるセルロース
ドープが、 セルロース含有率 ( C c ) およびセルロース ドー プ中のセルロース の粘度平均重合度 ( D P c ) と特定の関係 を満たすゼロ 剪断粘度 " 0 ) を示す と き、 重合度の高いセ ルロースを高含有率で含む場合でも安定であ り 、 ゲル化を起 こ さない こ と を見出 した。
また本発明者 らは、 そのよ う なセルロース ドープは、 特定 の方法によ り 製造した、 特異な物性を有するセルロースス ラ リ ーを用いる こ と によっ て製造する こ とができる こ と を見出 した。
これらの知見に基づき、 本発明を完成した。
従っ て、 本発明の 1 つの目的は、 重合度の高いセルロース を高含有率で含む場合でも安定であ り 、 ゲル化を起こ さない セルロース ド一ブを提供する こ とにある。
本発明の他の 1 つの 目的は、 上記のセルロース ドープの製 造方法を提供する こ とにある。
本発明の更に他の 1 つの目的は、 上記セルロース ドープを 凝固処理に付して得 られるセルロース成形品を提供する こ と にある。
本発明の更に他の 1 つの目的は、 上記セルロース ドープを 製造するために用い られるセルロースス ラ リ ーを提供する こ と にある。
本発明の上記及び他の諸目的、 諸特徴並びに諸利益は、 貼 付の図面を参照しながら述べる次の詳細な説明及び請求の範
囲の記載か ら明 らかになる。 図面の簡単な説明
図 1 は、 本発明のセルロースス ラ リ ーの粘性特性を示す粘 度一応力曲線であ り 、
図 2 は、 実施例 2 5 〜 2 7 ( 「アルカ リ セルロースス ラ リ ー」 と表記) 並びに比較例 2 2および 2 3 ( 「水/セル口 ースス ラ リ ー」 と表記) において用い られたセルロースの重 合度 ( D P c ) と、 得 られたゲルフ ィ ルムの強度の関係を示 すグラ フであ り 、
図 3 は、 実施例 9 、 1 1 、 1 2 、 1 4および 1 5 で得 られ たセルロース ドープが、 下記の式 ( 1 ) を満足するゼロ剪断 粘度 7? 。 を示すこ とを示すためのグラ フである。 発明の詳細な説明
本発明によれば、 苛性ソーダ水溶液及び該溶液に溶解した セルロースを包含してなるセルロース ドープであって、
苛性ソーダ濃度 ( C N a ) が 6 . 5 〜 1 1 重量%であ り 、 セルロース含有率 ( C c ) が 4〜 : L 2 重量%であ り 、
下記式 ( 1 ) を満足するゼロ剪断粘度 を示す こ と を特徴とするセルロース ドープが提供される。
?7。 = k C cm X D P cp ( 1 ) 式中 : 訂芷された用紙 (規則 91)
7) 。 はセルロース ドープのゼロ剪断粘度 ( mP a · s ) を 表わし、
C c はセル ロ ース ド 一 プのセ ル ロ ー ス 含有率 (重 量% ) を表わし、
D P c はセルロース ドープ中のセルロースの粘度平均 重合度を表わし、
k = 3 . 9 X 1 0
5 ≤ m ≤ 7 , そして
3 ≤ p ≤ 4
である。 次に、 本発明の理解を容易にするために、 まず本発明の基 本的諸特徵および好ましい態様を列挙する。
1 . 苛性ソーダ水溶液及び該溶液に溶解したセルロースを包 含してなるセルロース ドープであって、
苛性ソーダ濃度 ( C N a ) が 6 . 5 〜 1 1 重量%であ り、 セルロース含有率 ( C c ) が 4〜 1 2 重量%であ り、
下記式 ( 1 ) を満足するゼロ剪断粘度 ( 7„) を示す こ とを特徴とするセルロース ドープ。
7? 。 = k C cm X D P cp ( 1 ) 式中 :
π はセルロース ドープのゼロ剪断粘度 ( mP a · s ) を
表わし、
C c はセル ロ ース ド ー プのセル ロ ース含有率 (重 量% ) を表わし、
D P c はセルロース ド一プ中のセルロースの粘度平均 重合度を表わし、
k = 3 . 9 X 1 0
5 ≤ m ≤ 7 , そして
3 ≤ p ≤ 4
である。
2 . セルロースの粘度平均重合度 ( D P c) が 3 5 0 〜 1 2 0 0 であ り 、 セルロース含有率 ( C c) が 5 〜 ; L 0 重量%で あ り 、 かつ、 mが 6 . 3 〜 6 . 5 であ り 、 pが 3 . 2 〜 3 .
5 である こ とを特徴とする前項 1 に記載のセルロース ドープ
3 . セルロース ドープの N M R分析において、 セルロースの グルコース単位の 6位の炭素原子が示す縦緩和時間 ( て c ) が 1 0 〜 4 0 0 m s であ り、 セルロースのグルコース単位の 1 位の炭素原子が示す縦緩和時間 ( て c ) が 2 0 0 〜 1 0 0 0 0 m s である こ とを特徵とする前項 1 または 2 に記載のセ ルロース ドープ。
4 . セルロース ドープの N M R分析において、 セルロースの
グルコース単位の 6位の炭素原子が示す縦緩和時間 ( て c ) が 1 0 〜 2 0 0 m s である こ と を特徴とする前項 3 に記載の セルロース ド一プ。
5 . アルカ リ の存在下で水酸基に反応する反応剤との反応に よってセルロースの水酸基の一部が修飾されている こ とを特 徵とする前項 1 〜 4 のいずれかに記載のセルロース ド一プ。
6 . 反応剤がエーテル化剤とザンテー ト化剤か らなる群か ら 選ばれる こ とを特徴とする前項 5 に記載のセルロース ド一プ
7 . 反応剤がセルロースのグルコース単位 1 モルに対して 0 1 モル以下用い られる こ とを特徴とする前項 5 または 6 に記 載のセルロース ドープ。
8 . 前項 1 のセルロース ドーブの製造方法に して、
( 1 ) 平均粒径 3 0 以下のセルロース粒子を分散させ た苛性ソーダ水溶液か ら な り 、 苛性ソーダ濃度が 0 . 5 重 量% 〜 6 . 5 重量%未満であ り 、 セルロ ース含有率が 5 重 量%以上であるセルロースス ラ リ ーを提供し、
( 2 ) 該セルロースス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度を 6 . 5 〜 1 1 重量% に調節 し、 そ して
( 3 ) 該セルロースス ラ リ ーを 1 0 °C以下の温度で攪拌装
置で攪拌し、 その際、 攪拌のせん断速度を 9 0 0 0 / s e c 以下とする という条件と、 撹拌装置の攪拌子の先端速度でみ た攪拌速度を 5 0 O m/m i n以下とする とい う条件からな る群か ら選ばれる少なく とも 1 種の条件を満足する攪拌条件 下で攪拌を行ない、
該工程 ( 2 ) と ( 3 ) は、 この順序でまたは同時に行ない それによつて、 該セルローススラ リ ー中のセルロース粒子 を、 セルロースの溶解分率が 9 9 . 0 重量%以上となるまで 溶解させてセルロース ドープを得る
工程を包含し、
該セルロースス ラ リーが下記式 ( 2 ) :
σ τ = K x e x p (. k i C jf a ( 2 ) 式中 :
σ τは該スラ リ ーの降伏応力 ( P a ) を表わし、
K i は任意常数 ( P a ) を表わし、
k ! ≤ 0 ,
C N a は該ス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度 (重量% ) を表 わす、
を満足し、 且つ、
該ス ラ リ 一の固体 N M R分析においてス ラ リ 一中のセル ロースが示す、 下記式 ( 3 ) で定義される非晶度 ( χ am) が 0 . 5 以上である
こ とを特徴とする製造方法。
χ am = I high, ( I high+ 1 i。w) ( 3 ) 式中 :
χ am はス ラ リ ー中のセルロースの非晶度を表わ し、
I high と I i。w は、 それぞれ、 ス ラ リ ーの固体 N M R スペク トルにおいて、 ス ラ リ ー中のセルロースのグル コース単位の 4位の炭素原子の高磁場成分に対応する ピーク の面積と低磁場成分に対応する ピーク の面積の 分率を表わ し、 但し、 該高磁場成分に対応する ピーク と該低磁場成分に対応する ピークの分離は、 各々 の ピ ーク をガウス型の分布関数に近似して行なう 。
9 . 該セルローススラ リ ーが下記式 ( 4 ) を満足する こ と を 特徴とする前項 8 に記載の方法。
σ T = Κ 2 + k 2 D P c ( 4 )
式中 :
σ τは該ス ラ リ ーの降伏応力 ( P a ) を表わ し、
K 2 は任意常数 ( P a ) を表わし、
k 2 ≤ 0 ( k 2 の単位は P a ) 、 そして
D P c は該ス ラ リ ー中のセルロースの粘度平均重合度 を表わす。
1 0 . セルロースス ラ リ ー中のセルロースの平均粒径が 2 0 m以下である こ とを特徴とする前項 8 または 9 に記載の方
法。
1 1 . セルローススラ リ ー中のセルロースの粘度平均重合度 ( D P c) 力 3 5 0 〜 1 2 0 0 である こ とを特徴とする前項
8 〜 1 0 のいずれかに記載の方法。
1 2 . アルカ リ の存在下で水酸基に反応する反応剤との反応 によってセルローススラ リー中のセルロースの水酸基の一部 が修飾されている こ とを特徴とする前項 8 〜 1 1 のいずれか に記載の方法。
1 3 . アルカ リ の存在下で水酸基に反応する反応剤を工程 ( 1 ) の後から工程 ( 3 ) の終了前までの間のいずれかの時 点でセルローススラ リーに加える工程を更に包含する ことを 特徴とする前項 8 〜 1 1 のいずれかに記載の方法。
1 4 . 反応剤がエーテル化剤とザンテー ト化剤からなる群か ら選ばれる こ とを特徴とする前項 1 2 または 1 3 に記載の方 法。
1 5 . 反応剤が、 セルロース ドープ中のセルロースのダルコ ース単位 1 モルに対して 0 . 1 モル以下となるよう に用い ら れる こ とを特徴とする前項 1 2 〜 1 4 のいずれかに記載の方
法。
1 6 . 前項 1 〜 7 のいずれかのセルロース ドープを、 乾燥凝 固、 ゲル化凝固及び中和凝固か らなる群か ら選ばれる少な く と も 1 種の凝固処理によ り処理して得られる こ とを特徴とす るセルロース成形品。
1 7 . セルロース ドープが多糖類、 ポ リ ペプチ ド及び天然樹 脂か らなる群か ら選ばれる少なく と も 1 種の添加剤を含有す る こ と を特徴とする前項 1 6 に記載のセルロース成形品。
1 8 . 繊維体、 平面状フ ィ ルム、 チューブ状フ ィ ルム、 中空 糸、 粒子、 スポンジ状物またはコーティ ングである前項 1 6 または 1 7 に記載のセルロース成形品。 '
1 9 . 平均粒径 3 0 x m以下のセルロース粒子を分散させた 苛性ソーダ水溶液か らな り 、 苛性ソーダ濃度が 0 . 5 重量% 〜 6 . 5 重量%未満であ り 、 セルロース含有率が 5 重量%以 上であ るセルロースス ラ リ 一であっ て、
下記式 ( 2 ) :
a T = K 1 e x p ( k '1 C N a ) ( 2 ) 式中 :
σ τは該ス ラ リ ーの降伏応力 ( P a ) を表わ し、
は任意常数 ( P a ) を表わ し、
k ! ≤ 0 、
C N a は該ス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度 (重量% ) を表 わす、
を満足 し、 且つ、
該ス ラ リ ーの固体 N M R分析においてス ラ リ ー中のセル ロ ースが示す、 下記式 ( 3 ) で定義さ れる 非晶度 ( χ am) が 0 . 5 以上である
こ と を特徴とするセルロースス ラ リ ー。
X am = I high/ ( I high+ I low) 、 ^ ) 式中 :
χ am はス ラ リ ー中のセルロースの非晶度を表わし、
I high と I low は、 それぞれ、 ス ラ リ ーの固体 N M R スぺク トソレにおいて、 ス ラ リ ー中のセルロースのグル コース単位の 4位の炭素原子の高磁場成分に対応する ピーク の面積と低磁場成分に対応する ピーク の面積の 分率を表わ し、 但し、 該高磁場成分に対応する ピーク と該低磁場成分に対応する ピーク の分離は、 各々 のピ ーク をガウス型の分布関数に近似して行なう。
2 0 . 下記式 ( 4 ) を満足する こ と を特徴とする前項 1 9 に 記載のセルロースス ラ リ ー。
σ τ = K , + k 9 D P c ( 4 )
式中 :
σ τは該ス ラ リ ーの降伏応力 ( P a ) を表わし、
K 2 は任意常数 ( P a ) を表わ し、
k 2 ≤ 0 ( k 2の単位は P a ) 、 そ して
D P c は該ス ラ リ ー中のセルロースの粘度平均重合度 を表わす。
2 1 . セルロースの平均粒径が 2 0 m以下である こ と を特 徴とする前項 1 9 または 2 0 に記載のセルロースス ラ リ ー。 以降、 本発明を詳細に説明する。
本発明のセルロース ドープは、 苛性ソーダ水溶液及び該溶 液に溶解 し たセル 口 ース を包含 してな り 、 苛性ソーダ濃度 ( C N a ) が 6 . 5 〜 : 1 1 重量%であ り 、 セルロース含有率
( C c ) が 4 〜 1 2重量%であ り 、 下記式 ( 1 ) を満足する ゼロ剪断粘度 ( 77 。) を示すこ とを特徴とする。
7? 0 = k C cm X D P cp ( 1 ) 式中 :
7? 。 はセルロース ド一プのゼロ剪断粘度 ( mP a · s ) を 表わ し、
C c はセ ル ロ ー ス ド ー プの セ ル ロ ー ス 含有 率 (重 量% ) を表わ し、
D P c はセルロース ドープ中のセルロースの粘度平均
重合度を表わ し、
k = 3 . 9 X 1 0 一 1 1、
5 ≤ m ≤ 7 , そして
3 ≤ p ≤ 4
である。 セルロース含有率 ( C c ) が 4重量%未満では、 セルロー スは可溶化されやすく 、 その結果セルロース ドープの安定性 が向上しゲル化しに く く なるが、 このセルロース ドープを用 いて得られた繊維やフィ ルムなどの成形品の機械的強度が低 く なる。 また成形途中の過程にある成形品の強度も当然低く なるので、 成形品を工業的規模で安定に生産する こ とが困難 である。 また、 苛性ソーダ濃度 ( C N a ) が 6 . 5〜 1 1 重 量%の範囲外である と、 セルロースが充分溶解しない。
一般に、 高分子溶液の粘度は、 高分子の濃度の冪関数と、 高 分子の分子量の冪関数の積として表わすことができる。 これは、 高分子溶液の粘度の自然対数を、 高分子の濃度または分子量の 自然対数に対してプロッ トすると、 直線状のグラフが得られるこ とを意味する。 ただし、 このような関係は特定の濃度または分 子量の範囲内においてのみ成立し、 濃度または分子量がその範 囲を超える と成立しなく なり、 通常濃度または分子量の自然対 数の変化量に対する溶液の粘度の自然対数の変化量が急激に増 加する。 これは、 上記のような関係が、 高分子全体に充分に溶 訂正された用紙 (規則 91)
媒和が起こ り、 高分子の会合や架橋などが生じていない状態に おいてのみ成立するためである。
セルロース溶液 (セルロース ドープ) の場合も同様で、 こ の場合、 セルロース ド一プのゼロ剪断粘度 ( 7? 。) は、 セル ロース含有率 ( C c ) の冪関数と、 セルロースの粘度平均重 合度 ( D P c) の冪関数の積である、 上記式 ( 1 ) によ っ て 表わされる。 本発明のセルロース ド一プでは、 従来のものに 比べ、 上記式 ( 1 ) が成立するセルロース含有率 ( C c ) お よび粘度平均重合度 ( D P c) の範囲が広い と い う特徴を有 している。
セルロース ドープが上記式 ( 1 ) を満足するゼロ剪断粘度 ( T) 0) を示すか否かについては、 次に示す方法によ っ て容 易に確認する こ とができる。
まず、 セルロース ドープの重量とゼロ剪断粘度 ( 7? 。) を 測定する。 得 られたゼロ剪断粘度 ( 。) の測定値を 「実測 ゼロ剪断粘度」 と称する。
次に、 適当な方法、 例えば、 セルロース ドープに酸を加え て中和させる こ とによってセルロース ドープ中のセルロース を析出させ、 析出 したセルロースを回収した後乾燥し、 重量 を測定する。 セルロース ド一プの重量に対する、 回収された セルロースの重量の比率 (重量% ) をセルロース含有率 ( C c ) とする。
更に、 回収されたセルロースの粘度平均重合度 ( D P c) 訂正された用紙 (規則 91)
を測定する。
以上のよ う に して測定したセルロース濃度 ( C c ) および 粘度平均重合度 ( D P c) を上記式 ( 1 ) に代入し、
m = 5 、 p= 3 のとき、
m = 7 、 p= 3 のとき、
m = 5 、 p= 4 のとき、 および
m = 7 、 ρ= 4 のとき
のそれぞれについてゼロ剪断粘度 を計算する。
得られた 4つの計算値のう ちの最小値から最大値までの範 囲に上記の実測ゼロ剪断粘度が含まれていれば、 セルロース ドープは上記式 ( 1 ) を満足するゼロ剪断粘度 ( 77 。) を示 すこ とが確認される。
本発明のセルロース ドープにおいては、 セルロースの粘度 平均重合度 ( D P c) が 3 5 0 〜 1 2 0 0 であ り 、 セルロー ス含有率 ( C c ) が 5 〜 1 0 重量%である こ とが好ましい。 また上記式 ( 1 ) 中の mが 6 . 3 〜 6 . 5 であ り 、 pが 3 . 2 〜 3 . 5 である こ とが好ま しい。 このよう に上記式 ( 1 ) 中の mおよび p の範囲が極めて狭いこ とは、 セルロース ドー プ中のセルロースが高度に可溶化されている こ とを意味して いる。
従来、 重合度の高いセルロースを高含有率で含むセルロー ス ド一プを調製する ことは非常に困難であった。 その上セル ロース含有率が高く 、 セルロースの重合度が高いセルロース
ドープほど不安定で、 ゲル化しやすい。 しかし、 本 明のセ ルロース ドープは、 重合度の高いセルロースを高含有率で含 む場合でも安定であ り 、 ゲル化を起こさない。
以下、 本発明の基本的特徴を更に明らかにするために、 本 発明の完成に至る経緯を追いながら、 本発明に包含される技 術的諸特徴について説明する。 なお以降の説明において、 セ ルロース を構成する グルコース単位の 6 個の炭素原子を、 各々次のよ う に略称する。
グルコース単位の 1 位の炭素原子 : C 1
グルコース単位の 2位の炭素原子 : C 2
グルコース単位の 3位の炭素原子 : C 3
グルコース単位の 4位の炭素原子 : C 4
グルコース単位の 5位の炭素原子 : C 5
グルコース単位の 6位の炭素原子 : C 6 上記の通 り、 セルロースは多数の D —グルコース分子が /3 - 1 , 4結合を介して直鎖状に結合した構造を有する多糖で あるので、 セルロース分子中には親水性基である水酸基が多 数存在する。 そのためセルロースは、 一見極めて親水性が高 いと考え られるが、 実際にはセルロースは全く 水に溶解しな い。 これは次のような理由によると考え られる。
一般に、 ある化合物が固体状態にある とき、 その化合物の 分子同士は互いに近接している。 そのため、 その分子の立体
配座 (c o n f o r m a t i o n ) は、 分子間水素結合などの分子間相互 作用によって固定される。
しかし、 その化合物を溶媒に溶解する と、 その化合物の分 子の周囲が溶媒分子に取り 囲まれる こ とによ り 、 上記のよう な分子間相互作用が消失する。 その結果、 その分子の立体配 座の自 由度が飛躍的に上昇する。 このこ とは、 ある化合物を 溶媒に溶解して溶液にする と、 固体状態にある ときよ り も、 その化合物と溶媒からなる系のエン ト ロ ピ一が高く なる こと を意味する。
換言すれば、 ある化合物を溶媒と接触させても、 その化合 物と溶媒からなる系のエン ト ロ ピーが、 固体状態にあるとき よ り も高く ならない場合、 その化合物は溶媒に溶解しない。 これは通常、 その化合物と溶媒の親和性が、 上記の分子間相 互作用を消失させるに足るほど高く はないこ とによる もので ある。
しかしセルロースの場合、 親水性基である水酸基を数多く 有し、 親水性が一見極めて高いと考えられるにもかかわらず 水に溶解しない。 これは、 以下の理由による と考えられる。
セルロース分子中の隣接した (即ち互いに 3 — 1 , 4結合 によって結合している) 2個のグルコース単位間には分子内 水素結合が存在する。 こ の分子内水素結合は、 第 1 のダルコ ース単位の C 3 に結合した水酸基と、 第 2 のグルコース単位 の C 5 に結合した ( 6 員環内の) 酸素原子との間に存在する
その結果、 セルロース分子中の隣接した 2 つのグルコース単 位間の空間的な位置関係は実質的に固定されている。
このような分子内水素結合がセルロース分子鎖のほぼ全体 にわたつて存在するので、 セルロース分子の実質的に全体が 立体配座の自 由度が極めて低い、 剛直な棒状分子鎖となる。
通常、 水素結合は水によって容易に切断される。 実際、 セ ルロース分子間の水素結合は水によって容易に切断され、 そ の結果セルロースは水で膨潤する。 これに対し、 通常分子内 水素結合は水と接触させても切断されない。 そのため、 セル ロースを水と接触させても、 分子内水素結合は切断されず、 セルロース分子は水中でも、 立体配座の自由度が低い、 剛直 な棒状分子鎖の状態のまま保持される。 このため、 セルロー スを水と接触させても、 セルロース と水からなる系のェン 卜 口 ピーは固体状態にある ときよ り も高く ならず、 セルロース は膨潤するのみで水に溶解しない。
以上のこ とか ら、 セルロースを溶媒に溶解させ、 ドープを 得るためには、 上記の分子内水素結合を切断する こ とによ り セルロース分子の立体配座の自由度を高める必要がある こ と がわかる。
しかし、 分子内水素結合の切断の程度が不充分である と、 溶液中の立体配座の自由度が高いセルロースは、 すぐに立体 配座の 自 由度が低い、 不溶性のセルロース に戻って しま う (その結果、 ドープは不安定でゲル化しやすい) こ とになる
従って、 安定な (ゲル化しない) ドープを製造するためには セルロース の分子内水素結合をできるだけ多く 、 好ま しく は 全て切断する必要がある。
また、 セルロースの分子内水素結合の切断の程度が高いほ ど、 得られる ドープの粘度が低下する。 従って、 プロセサビ リ ティ の高い ドープを製造するという観点から も、 セルロー スの分子内水素結合をできるだけ多く 、 好ま しく は全て切断 する必要がある こ とになる。
セルロースの分子内水素結合を切断する方法の典型的な例 と しては、 セルロースに化学的修飾を施す.ことによって、 分 子内水素結合の形成を阻害する方法を挙げる こ とができる。 上記の通り 、 C 3 に結合した水酸基は分子内水素結合に直接 関与しているので、 この水酸基を修飾する こ とによ り分子内 水素結合の形成は阻害される。 また、 C 2 に結合した水酸基 を修飾する こ とによ り、 分子内水素結合の形成を間接的に阻 害する こ とができる。
工業的に重要な再生セルロース成形品の製造方法である、 上記のビスコース法および銅アンモニア法もこの方法に含ま れる。
銅ア ンモニア法の場合、 セルロースは銅アンモニア溶液中 の銅と結合して錯体を形成している。 このとき、 C 3 に結合 した水酸基と C 2 に結合した水酸基はいずれも錯体の形成に 関与するため、 分子内水素結合が切断される。
銅ア ンモニア法において実際に使用されている ドープでは セルロースの分子内水素結合は実質的に全て切断されている と考え られ、 そのため ド一プの安定性とプロセサピリ ティ は 非常に高い。 実際、 この ド一プは密栓して保存すれば数年間 安定と考え られている。 また この ドープは粘度が低く 、 流動 性が著し く 高いため、 曳糸性が極めて高い。
一方、 通常工業的に用い られる ビスコース法においては、 セルロースの水酸基を二硫化炭素と反応させてキサン トゲン 酸エステル化する こ とによ り 、 分子内水素結合が切断される しか し、 ビスコース法において使用されている ドープ (ビ ス コース) では、 C 3 に結合した水酸基と C 2 に結合した水 酸基の う ち、 キサン トゲン酸エステル化されている ものは、 実際には 3 0 %以下しかない。 従って、 ドープ中に溶解して いるセルロースには分子内水素結合が相当残っているため、 こ の ドープの安定性とプロセサピ リ ティ は低い。 実際、 この ドープは数 日でゲル化してしま う。
上記のよ うな、 セルロースの可溶化に関する従来の知見を 考慮 し、 本発明者 らは、 重合度の高いセルロースを高含有率 で含み、 且つ安定でゲル化を起こ さないセルロース ド一プを 得る こ と を 目的と して種々検討を行っ た。 その結果、 セル口 —ス ドープが上記式 ( 1 ) を満足するゼロ剪断粘度 ? 。 を示
訂正された用紙 (規則 91)
すとき、 重合度の高いセルロースを高含有率で含む場合でも セルロース ドープは安定でゲル化を起こさないこ とを見出し たものである。
本発明においては、 セルロース ドープの N M R分析におい て、 セルロースのグルコース単位の 6位の炭素原子 ( C 6 ) が示す縦緩和時間 ( て c ) が 1 0〜 4 0 0 m s である ことが 好ま し く 、 さ らに好ま し く は 1 0 〜 2.0 0 m s である。 また 本発明においては、 セルロース ドープの N M R分析において セルロースのグルコース単位の 1位の炭素原子 ( C 1 ) が示 す縦緩和時間 ( て c ) 力 2 0 0 〜 : L O O O O m s である こ と が好ま しい。
炭素原子の縦緩和時間 ( 7T C ) は、 その炭素原子の運動の 激しさの指標となる。 即ち、 激しく運動する炭素原子の て c は長く 、 運動の遅い、 または実質的に運動していない炭素原 子の て c は短い。
種々 の要因、 例えば分子内および Z又は分子間水素結合に よって炭素原子の運動が阻害されれば、 炭素原子の r c は短 く なる。 従って、 セルロース ド一プ中のセルロースの分子内 および 又は分子間水素結合の切断の程度が高く 、 セルロー ス分子の立体配座の自 由度が高い (即ち、 セルロースがよ り 高度に可溶化されてお り 、 セルロース ドープが安定でゲル化 しない) ほど、 セルロースのグルコース単位の炭素原子の て c は長く なる。
上記分子内水素結合の切断の程度が高く 、 セルロース分子 の立体配座の自由度が高いと、 セルロース分子全体が、 通常 の鎖状高分子と同様に屈曲性に富み、 比較的自由に運動し得 るよう になる。 従って、 上記分子内水素結合の切断の程度が 高く 、 セルロース分子の立体配座の自由度が高いと、 セル口 ース分子鎖の主鎖を構成している C 1 の て c は長く なる。
これに対し、 セルロースがよ り高度に可溶化され'ているほ ど、 C 6 の て c は短く なる。 これは次の理由によると考えら れる。
C 6 は、 C 1 〜 C 5 と酸素原子からなる主鎖に、 側鎖のよ う に結合している。 そのため、 セルロース分子全体の立体配 座の自 由度が低い状態にあっても、 C 6 の立体配座の自由度 は比較的高い。 しかしセルロースがよ り高度に可溶化される と、 溶媒和によって C 6 の周囲が多数の溶媒 (水) 分子によ つて取り 囲まれるので、 C 6 の運動が却って阻害される (つ ま り 、 立体配座の自 由度が低く なる) 。 この結果、 C 6 の て c は短くなる。
一方、 セルロース ドープのゲル化は、 水などによって隔て られ、 互いに独立して存在する微小な相における、 ミ ク ロ レ ベルでの相分離現象 (セルロースの析出) である と理解する こ とができる。 このゲル化が起こる とき、 セルロースの周囲 に存在していた水分子はセルロースから離れるので、 上記の ような分子内および分子間水素結合が再形成され、 セル口一
ス分子全体の立体配座の自由度が低下する。 しかし C 6 につ いては、 周囲の水分子によ り運動が阻害される こ とがなく な るため、 逆に立体配座の自 由度が高く なる。
以上のよ うな現象に伴い、 本発明のセルロース ド一プは、 セルロースがよ り 高度に可溶化されるほど、 C 1 の動きがよ り激し く な り、 C 6 はよ り動きにく く なる という特徴を持つ, このような本発明のセルロース ドープは、 次の工程 ( 1 ) 〜 ( 3 ) を包含する方法によって得られる。
( 1 ) 平均粒径 3 0 以下のセルロース粒子を分散させ た苛性ソーダ水溶液か らな り 、 苛性ソーダ濃度が 0 . 5 重 量%〜 6 . 5 重量%未満であ り 、 セルロース含有率力 S 5 重 量%以上であるセルロースス ラ リーを提供し、
( 2 ) 該セルローススラ リ ーの苛性ソーダ濃度を 6 . 5 〜 1 1 重量%に調節し、 そして
( 3 ) 該セルロースス ラ リ ーを 1 0で以下の温度で攪拌装 置で攪拌し、 その際、 攪拌のせん断速度を 9 0 0 0 / 5 6 じ 以下とする という条件と、 撹拌装置の攪拌子の先端速度でみ た攪拌速度を 5 0 O m/m i n以下とする という条件からな る群か ら選ばれる少なく とも 1 種の条件を満足する攪拌条件 下で攪拌を行ない、
該工程 ( 2 ) と ( 3 ) は、 この順序でまたは同時に行ない それによつて、 該セルローススラ リ ー中のセルロース粒子 を、 セルロースの溶解分率が 9 9 . 0重量%以上となるまで
溶解させてセルロース ドープを得る。
この と き、 上記セルロースス ラ リ ーは下記式 ( 2 ) : σ τ = K ^ x p ( k ^ N a ) ( 2 ) 式中 :
ひ τは該ス ラ リ ーの降伏応力 ( P a ) を表わ し、
は任意常数 ( P a ) を表わし、
k 1 ≤ 0 ,
C N a は該ス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度 (重量% ) を表 わす。
を満足 し、 且つ、 上記のス ラ リ ーの固体 N M R分析において ス ラ リ ー中のセルロースが示す、 下記式 ( 3 ) で定義される 非晶度 ( χ am) が 0 . 5 以上である。
χ am = I high, 、 1 high + 1 lowノ 、 3 ) 式中 :
χ am はス ラ リ ー中のセルロースの非晶度を表わし、
I high と I low は、 それぞれ、 ス ラ リ ーの固体 N M R スぺク トリレにおいて、 ス ラ リ ー中のセルロースのダル コース単位の 4位の炭素原子の高磁場成分に対応する ピーク の面積と低磁場成分に対応する ピーク の面積の 分率を表わ し、 但し、 該高磁場成分に対応する ピーク と該低磁場成分に対応する ピーク の分離は、 各々 のピ ーク をガウス型の分布関数に近似して行なう 。
まず、 上記工程 ( 1 ) について説明する。
上記工程 ( 1 ) では、 平均粒径 3 0 m以下のセルロース 粒子を分散させた苛性ソーダ水溶液からなり、 苛性ソーダ濃 度が 0 . 5 重量%〜 6 . 5重量%未満であ り、 セルロース含 有率が 5 重量%以上であるセルローススラ リ ーを提供する。
原料セルロースと しては、 パルプ、 綿、 綿リ ン夕一等の天 然セルロースや、 ビスコースゃキュプラアンモニゥム溶液な どのセルロース溶液から得られる再生セルロースなどのうち 1 種または 2種以上を組み合わせて使用する こ とができる。 天然セルロースから、 高度に可溶化されたセルロースを含 むセルロース ドープを製造する場合、 原料セルロースとして サルフ アイ ト法でパルプ化されたサルフ アイ ト法溶解パルプ を用いる こ とが好ま しい。 他の方法で得られた天然セルロ ー ス、 例えばク ラフ ト法溶解パルプを原料セルロースと して使 用 した場合、 セルロースが充分に可溶化されない。
これは、 セルロースの分子内水素結合の切断の程度がが高 いほど、 セルロースが高度に可溶化されるという従来の知見 から、 サルフ ァイ ト法溶解パルプにおいては、 上記のセル口 ースの分子内水素結合の切断の程度が高いためと考え られる 実際、 サルフ ァイ ト法溶解パルプとク ラフ ト法溶解パルプの 構造を比べる と、 サルフ アイ ト法溶解パルプは分子内水素結 合の切断の程度がク ラフ ト法溶解パルプよ り も大きい。
セルロースの粘度平均重合度 ( D P c ) は、 セルロースの
溶解性をコ ン ト ロールする上で重要なパラ メーターである。 D P c の調整には、 爆砕法、 酸加水分解法、 アルカ リ 加水分 解法、 電子線照射法、 ァ 線照射法、 機械的破壊法 (湿式粉砕 も含む) などの方法が適用できる。 ただし、 アルカ リ 加水分 解によっ て D P c を調整する場合、 高濃度のアルカ リ 水溶液 にセルロースを接触させる と、 不溶性の物質が生成するため に、 セルロースを高度に可溶化する こ とができな く なる場合 がある。 例えば、 苛性ソーダ水溶液を用いて加水分解を行う 場合、 使用する苛性ソーダ水溶液の濃度が 1 0 重量%以上に なる と、 セルロースの一部がアルカ リ セルロースに変換され る。 このアルカ リ セルロースはアルカ リ 水溶液に溶解しない ので、 セルロース を高度に可溶化する こ とはできな く なる。
なお、 爆砕法によっ て粘度平均重合度 ( D P c) を調整す る と、 分子内水素結合の切断の程度がク ラ フ ト法溶解パルプ よ り も大きいセルロースを得る こ とができる。
また、 セルロースがサルフ アイ ト法溶解パルプや再生セル ロースの場合は、 粘度平均重合度 ( D P c) の調整を必要と しない場合が多い。
セルロースス ラ リ ー中のセルロースの粘度平均重合度 ( D
P c ) の範囲は、 目 的 とする成形品の要求物性、 製造工程に おいて要求されるセルロース ドープの安定性などにもよるが 好ま し く は 3 5 0 〜 1 2 0 0 、 よ り 好ま し く は 4 0 0 〜 : L 0 0 0 である。 粘度平均重合度 ( D P c) が 3 5 0 未満になる
と、 得 られる成形品の機械的強度が低く なる。
以上のよ う なセルロースを、 苛性ソーダ水溶液中に平均粒 径 3 0 x m以下、 好ま し く は 2 0 m以下の粒子状となるよ う に分散させ、 セルロースス ラ リ ーを得る。 こ のとき、 得ら れるセルロースス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度が 0 . 5 重量%〜 6 . 5 重量%未満、 セルロース含有率が 5 重量%以上となる よ う にする。
この操作の 目的は、 セルロース の表面積を大き く し、 溶解 速度を上げる こ とである。 セルロースのアル力 リ 水溶液への 溶解速度は、 例えば銅ア ンモニア水溶液や力 ドキセン水溶液 などへのセルロースの溶解速度に比べて著し く 遅い。 そのた め、 セルロースをアルカ リ 水溶液に添加した後静置する と、 見かけ上溶解が止まっ てしま う。 しか し後述する理由によ り セルロース を溶解させる工程において高速で攪拌する こ とは 好ま し く ない。 そのため、 セルロースの表面積を大き く する こ と によっ て、 低速で攪拌する こ と によ り セルロースを溶解 させる こ とができるよ う にする。
セルロースの平均粒径が 3 O w mを超える と、 セルロース の溶解分率 ( S c ) が低下するばか り でな く 、 セルロース ド —プの安定性が低下し、 ゲル化し易 く なる。
セルロースス ラ リ ーを得る方法の例 と しては、 湿式粉碎法 を挙げる こ とができる。 以下、 湿式粉碎法について説明する 湿式粉砕法は、 水性媒体中でセルロース を粉砕する こ とに
よ り 、 所望の粒度を有するセルロース粒子が水性媒体中に分 散されてなるス ラ リ ーを得る方法である。
水性媒体と しては、 苛性ソーダ濃度が 6 . 5 重量%未満、 好ま し く は 2 〜 5 重量%の苛性ソーダ水溶液または水を用い る こ とができる。 6 . 5 重量%以上の'苛性ソーダ水溶液中で 湿式粉砕を行う と、 セルロースが部分的且つ不均一に溶解し て しま う ため、 セルロース ド一ブにおけるセルロースの溶解 分率 ( S c ) が著し く 低く なる。
セルロースの表面積を上げるための湿式粉砕法には、 セル ロース を粒子状にする方法と、 石臼型湿式粉砕機等を用いて フ ィ ブリ ル化させる方法があるが、 本発明においては前者の 方法を用 いる。
前者の方法によっ て得られるス ラ リ ーは粘度が低いため、 セルロース を溶解させる工程において均一且つ効率的な攪拌 を容易 に行う こ とができる。
一方後者の方法では、 フ ィ ブリ ル化されたセルロースを含 むス ラ リ ーが得られるが、 こ のよ う なス ラ リ ーは固形分 (セ ルロース) の含有率が低く ても粘度が著し く 高く ゲル状を呈 しているため、 セルロースを溶解させる工程において攪拌が 困難となるので好ま し く ない。
湿式粉砕法に用いる装置には特に限定はなく 、 セルロース を平均粒径 3 0 m以下、 好ま し く は 2 0 mの粒子状に粉 碎できる ものであればいずれの装置でも使用できる。 そのよ
う な装置の例と しては、 例えば日本国特開平 3 — 1 6 3 1 3 5 号公報に記載されているよ う な、 メディ ア式湿式粉砕装置 が好ま しい。
湿式粉碎法において用いるセルロースおよび水性媒体の量 には特に限定はないが、 湿式粉碎法によって得られるス ラ リ 一のセルロース含有率が 1 5 % を越える と、 ス ラ リ ーの粘度 が著し く 高 く な り 、 取 り 扱いが困難になるので、 通常、 得ら れるス ラ リ ーのセルロース含有率が 1 5 %以下となるよ う に する。
以上のよ う に して得られたス ラ リ ーにおける苛性ソーダ濃 度が 0 . 5 重量%〜 6 . 5 重量%未満であれば、 得られたス ラ リ 一をそのま ま、 または上記の範囲内で苛性ソーダ濃度を 調節し、 後述する工程 ( 2 ) および ( 3 ) においてセル口一 スス ラ リ ー と して用いる こ とができるが、 苛性ソーダ濃度が 0 . 5 重量%未満であれば、 苛性ソーダ濃度が 0 . 5 重量% 〜 6 . 5 重量%未満となるよ う に、 得 られたス ラ リ ーの苛性 ソーダ濃度に濃厚な苛性ソーダ水溶液または苛性ソーダ (固 体) を添加 した後、 セルロースス ラ リ ーと して用いる。
また、 得られるセルロースス ラ リ ーのセルロース含有率は 5 重量% 以上 と な る よ う にする。 セル ロース含有率が 5 重 量%未満では、 得 られるセルロース ドープのセルロース含有 率 ( C c ) が低く なるため、 実用に耐える強度を有する成形 品を得る こ とが困難となる。
また、 上記セルロースス ラ リ ーは下記式 ( 2 ) :
σ τ = K i e x p ( k i C N a ) 、 2 ) 式中 :
σ τは該ス ラ リ ーの降伏応力 ( P a ) を表わ し、
は任意常数 ( P a ) を表わし、
k 1 ≤ 0 、
C N a は該ス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度 (重量% ) を表 わす。
を満足する こ とが必要である。
上記式 ( 2 ) は、 降伏応力 σ τ の自然対数を、 苛性ソーダ濃度 C N a に対してプロッ トすると、 直線状のグラフが得られ、 且つ その傾きが 0以下である ことを意味する。 換言すれば、 上記式 ( 2 ) は、 苛性ソーダ濃度 C N a の増加に伴って上記セルロース スラ リーの降伏応力 σ τ が変化しないか、 または低下することを 意味し、 それは又、 上記セルローススラリーの粘度が変化しない 力 、 または低下することを意味する。 このことは、 下記するよう に意外なことであって、 本発明の大きな特徴である。
通常、 溶液中に粒子状の物質を分散させて得られるス ラ リ 一の粘度は、 溶液の濃度の増加に伴っ て増加する。 従っ て、 上記のス ラ リ ーは、 従来用い られていたス ラ リ ーとは全 く 異 なる、 極めて意外な特性を有 している。
この特性によ り 、 セルロースを溶解させるための工程にお いて、 過度の攪拌が不要となる。 そ して この こ と力 上記の 訂正された用紙 (規則 91)
方法によって、 重合度の高いセルロースを高含有率で含む、 安定でゲル化を起こ さないセルロース ドープが得られる こ と に関連している ものと思われる。
セルロースス ラ リ ーが上記式 ( 2 ) を満足する否かについ ては、 例えば次に示す方法によって容易に確認する こ とがで きる。
まず、 セルロースス ラ リ ーの重量と降伏応力を測定する。 この降伏応力を σ τ 1 とする。
次に、 セルロースス ラ リ ーの一部を秤量し、 適当な方法、 例えば中和滴定によ って分析する こ と によ り 、 セルロースス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度を求める。 こ の苛性ソーダ濃度を C N a 1 とする。
次いで、 セルロースス ラ リ ーの一部をと り 、 適当な量の苛 性ソーダを添加する。 苛性ソーダを添加した後のセルロース ス ラ リ ーにおける苛性ソーダ濃度を C N a 2 とする。 これは、 上記 C N a 1 を元に、 容易に算出する こ とができる。
その後、 苛性ソーダを添加 した後のセルロースス ラ リ ーの 降伏応力 σ τ 2 を測定する。
以上のよ う に して得 ら れた σ τ 1 、 σ τ 2 、 C N a l および C N a 2 に基づき、 降伏応力 σ T の対数を、 苛性ソーダ濃度 C N a に対してプロ ッ ト し、 得られた直線状のグラ フの傾き が 0 以下であれば、 セルロースス ラ リ ーは上記式 ( 2 ) を満 足する こ とが確認される。 訂正された用紙 (規則 91)
上記の湿式粉砕法によって得られたセルローススラ リ ーは, 通常上記式 ( 2 ) を満足する。
また、 上記セルロースス ラ リーの固体 N M R分析において スラ リ ー中のセルロースが示す、 下記式 ( 3 ) で定義される 非晶度 ( χ am) は 0 . 5 以上である。
X am = I high/ ^ 1 high+ 1 lo ( 3 ) 式中 :
χ amはスラ リ ー中のセルロースの非晶度を表わし、
I high と I 1()W は、 それぞれ、 スラ リ ーの固体 N M R スペク トルにおいて、 スラ リ ー中のセルロースのグル コース単位の 4位の炭素原子の高磁場成分に対応する ピークの面積と低磁場成分に対応する ピーク の面積の 分率を表わし、 但し、 該高磁場成分に対応する ピーク と該低磁場成分に対応する ピークの分離は、 各々 のビ ークをガウス型の分布関数に近似して行なう。
ス ラ リ ー中のセルロースの非晶度 χ am は、 セルロース分 子中の、 立体配座の自由度が高い領域の存在比に相当する。 上記の通り 、 セルロース分子の立体配座の自由度は極めて低 いが、 全く 自由度がないわけではない。 即ち、 セルロース分 子中には、 立体配座の自由度が低い領域と高い領域が存在し ている。 当然ながら、 セルロースを可溶化させる こ とは、 セ ルロース分子中の、 立体配座の自由度が高い領域の存在比を
高める こ と に相当する。
この立体配座の 自 由度が低い領域と高い領域の存在比の指 標と して、 上記ス ラ リ ーの固体 N M Rスぺク トルにおける、 ス ラ リ 一中のセルロースのグルコース単位の 4位の炭素原子 ( C 4 ) の ピーク の面積を利用する こ とができる。
上記の固体 N M Rスぺク トルにおいては、 通常 8 5 〜 9 5 p p mの範囲に 2 つのピークが観測される。 これらの ピーク のう ち 、 高磁場側の ピーク は、 立体配座の 自 由度が高い領域 の C 4 に帰属され、 低磁場側の ピーク は、 立体配座の自 由度 が低い領域の C 4 に帰属される。 N M Rスぺク トルにおける ピーク の面積は、 そのピーク に帰属される原子 (この場合は 炭素原子) の個数に比例する。 従っ て、 セルロース分子中の 立体配座の 自 由度が低い領域と高い領域の存在比は、 上記の 高磁場側の ピーク と低磁場側のピーク の面積比にほぼ等しい 従っ て、 セルロースの非晶度 χ am は、 セルロース分子の立 体配座の自 由度の指標となる ものである。
ただ し、 これら 2 つの ピーク は通常重なってお り 、 そのま までは正確な面積比を求める こ とができないので、 上記高磁 場成分に対応する ピーク と低磁場成分に対応する ピークの分 離は、 各々 のピーク をガウス型の分布関数に近似して行なう この方法ば当該分野において確立されたものであ り 、 N M R スぺク トルデータ をコ ン ピュータ一処理する こ とによって容 易に実施する こ とができる。
本発明において用いられる上記ス ラ リーでは、 上記のセル ロースの非晶度 χ amが 0 . 5以上と極めて高い。 , 例えば、 苛性ソーダ濃度 C N a が 2 重量%の苛性ソーダ水 溶液を用いる場合、 非晶度 χ am は 0 . 6 に及ぶのに対し、 苛性ソーダ水溶液に代えて水を用いる場合、 非晶度 χ am は 0 . 4 5 程度である。 このこ とから、 上記スラ リーでは、 セ ルロース分子の立体配座の自 由度が非常に高く なつている こ とがわかる。
そして、 こ の高い非晶度 χ am は上記ス ラ リ ーの降伏応力 σ τ と、 苛性ソーダ濃度 C N a の、 上記したよう な特異な関 係に関連があるものと思われる。
上記の湿式粉砕法によって得られたセルローススラ リ ーの 固体 N M R分析において、 スラ リ ー中のセルロースが示す非 晶度 ( χ am) は通常 0 . 5以上である。
ま た本発明 にお いては、 セルロ ース ス ラ リ ーが下記式 ( 4 ) を満足する こ とが好ましい。
σ T = Κ 2 + k 2 D P c ( 4 ) .
式中 :
ひ τは該スラ リーの降伏応力 '( P a ) を表わし、
K 2は任意常数 ( P a ) を表わし、
k 2 ≤ 0 ( k 2の単位は P a ) 、 そして
D P c は該ス ラ リ ー中のセルロースの粘度平均重合度 を表わす。
上記式 ( 4 ) は、 降伏応力 σ τ を、 セルロースの重合度 D P c に対してプロ ッ トする と、 直線状のグラ フが得られ、 そ の傾きが 0 以下である こ とを意味する。 換言すれば、 上記式 ( 4 ) は、 セルロースの重合度 D P c の増加に伴って上記セ ルロースス ラ リ ーの降伏応力 σ τ が変化しないか、 または低 下する こ と を意味し、 それは又、 上記セルロースス ラ リ ーの 粘度が変化しないか、 または低下する こ と を意味する。 この こ とは、 下記するよ う に意外なこ とである。
通常、 液体媒体中に粒子状の高分子物質を分散させて得ら れるス ラ リ ーの粘度は、 高分子物質の分子量 (重合度) の増 加に伴っ て増加する。 従って、 上記のス ラ リ ーは、 従来用い られていたス ラ リ ーとは全く 異なる、 極めて意外な特性を有 する場合がある。
セルロースス ラ リ ーが下記式 ( 4 ) を満足するか否かにつ いては、 次に示す方法に.よっ て容易に確認する こ とができる , まず、 セルロースス ラ リ ーの重量と降伏応力を測定する。 この降伏応力を σ τ 3 とする。
次に、 セルロースス ラ リ ーの一部を秤量し適当な方法、 例 えば中和滴定によっ て分析する こ と によ り 、 セルロースス ラ リ ーの苛性ソ一ダ濃度を求める。 この苛性ソーダ濃度を C Ν a 3 とする。 一方、 セルロースス ラ リ ーを真空乾燥後、 重量 を測定する。 この重量とセルロースス ラ リ ーの苛性ソーダ濃 度 C N a 3 か ら、 セルロースス ラ リ ーのセルロース含有率を 訂正された用紙 (規則 91)
求める こ とができる。 このセルロース含有率を C cs 3 とする 次いで、 得 られたセルロース粒子を用い、 粘度平均重合度 を測定する。 この粘度平均重合度を D P c l とする。
更に、 粘度平均重合度 D P c 2 (≠ D P c 1 ) を有するセル ロース を用いて、 セルロース含有率が C cs 3であ り 、 苛性ソ ーダ濃度を C N a 3 であるス ラ リ ーを、 上記の湿式粉砕法に よっ て調製 し、 得 られたス ラ リ ーの降伏応力 σ τ4 を測定す る。
以上のよ う に して得 られた σ τ 3 、 σ τ4 、 D P c l および D P c 2 に基づき、 降伏応力 σ τ を、 粘度平均重合度 D P c に 対してプロ ッ ト し、 得られた直線状のグラ フの傾きが 0以下 であれば、 セルロースス ラ リ ーは上記式 ( 4 ) を満足する こ とが確認される。
上記の湿式粉砕法によって得られたセルロースス ラ リ ーは 多く の場合上記式 ( 4 ) を満足する。
上記の方法で得られるスラ リ ー中のセルロースは、 分子内 水素結合がかな り の程度切断されているので、 セルロース分 子の立体配座の自 由度が高く なつ ている。 この結果、 セル口 ースは比較的容易に苛性ソーダ溶液に溶解するよ う にな り 、 重合度の高いセルロース を高含有率で含む、 安定でゲル化を 起こ さないセルロース ド一プが得られる。
上記の方法で得られるス ラ リ ー中のセルロースの分子内水 素結合の切断の程度が高 く なる理由は明 らかではないが、 苛 訂正された用紙 (規則 91)
性ソーダ水溶液のラマンスペク トルおよび従来のセルロース ドープの N M Rスペク トルから次のような知見が得られたと の報告があ り 、 それらが何らかの形で関与している可能性が ある。
濃度が 2 _ 5 重量%の '苛性ソーダ水溶液のラマンスぺク ト ルにおいて観測される、 〇— H伸縮振動や〇一 H変角振動に よる ピークは、 上記の範囲外の濃度の苛性ソーダ水溶液に比 ベ、 やや特異な位置に観測される。 ( P o l y m e r J o u r n a l 、 2 0 、 4 4 7 ( 1 9 8 8 ) ) 。 これは、 以下の 理由による と推定されている。
一般に、 濃度が 6重量%以下のとき、 苛性ソーダ水溶液中 のナ ト リ ゥムイ オンには水分子が 4モル以上配位しているが 濃度が 2 〜 5 重量%のときには、 ナ ト リ ウムイオンに配位し た水分子 (配位水) が、 周辺のナ ト リ ウムイオンに配位して いない水分子 (自 由水) とエネルギー交換しているため、 ラ マンスペク トルにおける ピークの位置が変化する。
また、 従来のセルロース ド一プの N M Rスぺク トルから、 ナ ト リ ウムイオンが C 2 に結合した O H基の近傍に位置する こ とによ り 、 C 2 および C 3 の原子核周辺の電子密度が変化 している こ とを示唆する結果が得られている ( P o 1 y m e r J o u r n a l , 1 7 、 7 0 7 ( 1 9 8 5 ) ) 。
次に、 上記工程 ( 2 ) および ( 3 ) について説明する。 上記工程 ( 2 ) では、 上記工程 ( 1 ) において提供された
セルロースス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度を 6 . 5 〜 1 1 重量% に調節する。
上記工程 ( 3 ) では、 上記のセルロースス ラ リ ーを 1 0 以下の温度で攪拌装置で攪拌し、 その際、 攪拌のせん断速度 を 9 0 0 0 / s e c 以下とする とい う 条件と、 撹拌装置の攪 拌子の先端速度でみた攪拌速度を 5 0 0 m /m i n以下とす る とい う 条件か らなる群か ら選ばれる少な く と も 1 種の条件 を満足する攪拌条件下で攪拌を行ない、 該セルロースス ラ リ 一中のセルロース粒子を、 セルロースの溶解分率が 9 9 . 0 重量%以上となる まで溶解させてセルロース ド一プを得る。
上記工程 ( 2 ) と ( 3 ) は、 この順序でまたは同時に行な う こ とができる。
上記工程 '( 2 ) の苛性ソーダ濃度の調節は、 以下のよう に して行う こ とが好ま しい。
まず、 上記工程 ( 1 ) において提供されたセルローススラ リ ーを 1 0 以下、 通常は 0 〜 一 3 に冷却する。 次いで、 このセルロースス ラ リ ーに、 1 0で以下、 通常は— 1 0
1 8でに冷却した苛性ソーダ水溶液を添加する こ とによ り 、 セルロースス ラ リ ーの苛性ソーダ濃度を 6 . 5 〜 1 1 重量% 好ま し く は 7 〜 1 0 重量% に調節する。
上記苛性ソーダ水溶液の濃度は、 セルロース ドープの苛性 ソ一ダ濃度が所望の値となるよ う適宜選択する こ とができる が、 通常は 1 0 〜 4 5重量%である。
上記の苛性ソーダ水溶液は、 凍結しない範囲で可能な限り 低温まで冷却する こ とが特に好ま しいが、 通常は— 1 0 〜 一 1 8 t;まで冷却すれば充分である。 この温度までの冷却は、 通常用いられている冷凍庫を用いて冷却する こ とによ り容易 に実施可能である。 苛性ソーダ水溶液の濃度によっては、 一 1 0 〜 一 1 8 まで冷却する (冷凍庫を用いて冷却する) こ とによって凍結する場合がある。 そのような場合には、 苛性 ソーダ水溶液を、 — 1 0 °Cを超えて 1 0 以下の範囲で、 凍 結しない範囲で可能な限り低温まで冷却する こ とが好ましい。
以上のよう にして苛性ソーダ濃度の調節を行った後、 セル ローススラ リーを攪拌装置で攪拌し、 セルローススラ リー中 のセルロース粒子を溶解させて、 セルロース ドープを得る。
この操作は、 1 0 °C以下の温度で行う必要がある。 1 0 を越える温度で行う と、 セルロースが充分可溶化されず、 そ の結果セルロース ド一プの安定性が低下しゲル化しやすく な る。
また攪拌装置による攪拌は、 攪拌の剪断速度を 9 0 0 0 / s e c 以下とする という条件と、 撹拌装置の攪拌子の先端速 度でみた攪拌速度を 5 0 O m / m i n以下とする という条件 か らなる群から選ばれる少なく とも 1 種の条件を満足する攪 拌条件下で行なう。
撹拌装置の攪拌子の先端速度は、 次の式によって表わされ る。
撹拌装置の攪拌子の先端速度 (m /m i n )
=攪拌子の回転数 ( r p m ) X攪拌子の直径 (m )
X 3 . 1 4 また攪拌の剪断速度は、 上記撹拌装置の攪拌子の先端速度 を、 攪拌子の先端か ら攪拌槽内壁までの距離で除した値に相 当する。
セルロースのアル力 リ 水溶液への溶解速度は、 セルロース の銅ア ンモニア水溶液やカ ドキセン水溶液などへの溶解速度 に比べて著しく 遅い。 こ のため、 セルロース をアルカ リ 水溶 液に添加した後撹拌せずに静置したままでは、 見かけ上溶解 は停止し、 セルロースの溶解分率 ( S c ) は 5 0 %に満たな いので、 攪拌によ り セルロースの溶解を促進する必要がある 通常、 高速撹拌可能なミ キサーなどを用い、 高速で攪拌す れば、 溶解速度はよ り 上がる。 しかし、 高速撹拌を行う と、 系全体の平均温度は上記の 1 0 °C以下の温度に保持されてい ても、 局所的な発熱が起 こ る。 そのため'、 セルロース ドープ の安定性が低下しゲル化しやすく なる。 また、 セルロースの アルカ リ 水溶液に対する溶解度は、 高温になる ほど低下する と い う特性があるので、 上記のよ う な高速撹拌に伴う局所的 な発熱によって、 セルロースス ラ リ ーが加温される こ とは好 ま し く ない。
このよ う な理由によ り 、 本発明においてはセルロースス ラ 訂正された用紙 (規則 91)
リ ーを低速で攪拌する必要がある。
上記のセルローススラ リ ーは、 上記式 ( 2 ) を満足し、 好 ま し く は更に上記式 ( 4 ) を満足する。 この こ とは、 上記の セルロースス ラ リ ーは、 苛性ソーダ濃度 C N aが高く なつ て も粘度が上昇しない という特性を有し、 好ま し く は更にセル ロースの粘度平均重合度 D P c が高く ても粘度が上昇しない とい う特性を有する こ とを意味する。 従って、 上記のセル口 ースス ラ リ ーを用いる と、 高速攪拌しなく ても容易に安定な ゲル化しに く いセルロース ドープを得る こ とができる。
この攪拌を行う攪拌装置には特に限定はなく 、 上記のよ う な攪拌条件での攪拌が可能であればどのよ う な攪拌装置を用 いてもよい。 本発明において使用可能な攪拌装置と しては、 一軸二一ダーおよび二軸ニーダ一を挙げる こ とができる。 ま た上記の攪拌は、 バッチ式、 連続式のいずれの様式で行って もよい。
以下、 上記の攪拌条件の重要性の理解を容易にするため、 セルロース を溶解させるための攪拌条件と、 得られたセル口 ース ドープの安定性に関 して若干の例を示す。
粘度平均重合度 ( D P c ) 4 5 0 、 セルロース含有率 ( C c ) 5 重量%のセルロース ドープを調製する際、 剪断速 度 1 7 0 0 0 / s e c 、 撹拌装置の先端速度 1 0 2 O m / m i n ( 日本国特殊機化製 T . Κ . ホモミ キサーを用い、 攪拌 子の回転数 1 2 0 0 0 r p mで攪拌) 、 または剪断速度 訂正された用紙 (規則 91)
9 4 0 0 / s e c 、 撹拌装置の先端速度 5 7 O m/ m i n ( 日本国桜製作所 (株) 製 S — 1 ミ キサー S M J — 4 0 (攪 拌槽の内容積 6 4 m l ) を用い、 攪拌子の回転数 4 5 0 0 r p mで攪拌) の攪拌条件下で高速撹拌する と、 セルロースの 溶解工程中の平均的な温度を— 2 °C以下に保ったままでも、 溶解直後にゲル化し、 セルロース ドープは得られない。
これに対し、 同じセルロース ドープを調製する際、 剪断速 度 2 0 0 0 / s e (: 、 撹拌装置の先端速度 1 2 O m/m i n で低速撹拌する と、 得られたセルロース ドープは一週間以上 ゲル化せず安定であ り 、 またセルロースの溶解分率 ( S c ) は 9 9 . 0重量%以上である。
同 じ攪拌条件で、 セルロースの粘度平均重合度 ( D P c) を 8 0 0 まで高めても、 得られたセルロース ドープは一週間 以上ゲル化せず安定であ り 、 またセルロースの溶解分率 ( S c ) は 9 9 . 0重量%以上である。
ま た、 上記工程 ( 3 ) において、 セルロース の溶解分率 ( S c ) は 9 9 . 0重量%以上となるよ う にする。 S c が 9 9 . 0 重量%未満である と、 繊維やフ ィ ルムなどの成形品の 製造プロセスにおいて、 上記したよ う なフ ィ ルター詰ま り が 多発し、 工業的規模の成形品の製造は実質的に不可能となる 以上のよ うな方法によっ て得 られる本発明のセルロース ド ープは、 重合度の高いセルロース を高含有率で含む場合でも 安定であ り 、 ゲル化を起 こ さないので、 本発明のセルロース 訂正された用紙 (規則 91)
ドープか ら 、 工業的に合理的な凝固方法によっ て、 機械的強 度の高いセルロース成形品、 例えば繊維、 フ ィ ルム、 粒子、 スポンジなどを、 特殊な成形装置を用いる こ となく 、 安定に, 且つ効率よ く 製造する ことができる。
一方、 成形品の製造コス ト の低減の観点か ら は、 セルロー スの溶解分率 ( S c ) を 9 9 . 0 重量%以上に保持しつつ、 セルロース ドープのセルロース含有率 ( C c ) をよ り 高める こ とが好ま しい。 こ の 目的を達成するためには、 アルカ リ の 存在下で水酸基に反応する反応剤、 例えばビニル化合物、 ェ 一テル化剤、 ザンテー ト化剤などとの反応によっ てセルロー スの水酸基の一部を修飾する こ とが非常に有効である。 反応 剤を使用 しない場合、 本発明のセルロース ドープにおけるセ ルロース含有率 ( C c) は通常 6〜 7 重量%であるが、 上記 の修飾に よ り 、 セル ロ ース含有率 ( C c) は通常 8 〜 9 重 量% まで向上する。 この値は、 従来の ビス コース法で用い ら れているセルロース ドープ (ビスコース) のセルロース含有 率 ( C c) ( 8 . 5 重量% ) と同程度である。
反応剤 と しては、 エーテル化剤とザンテー ト化剤か らなる 群か ら選ばれる反応剤を用いる こ とが好ま しい。
一般に、 セルロースを水溶性とする こ と を 目的と して、 セ ルロース を上記の反応剤 と反応させる場合、 反応剤の使用量 は通常グルコース 1 残基当た り 0 . 3 モル〜 1 . 2 モル程度 が適当 と されている。 しかし反応剤の使用量が上記の範囲で
ある とセルロース成形品の機械的強度、 特に湿潤時の機械的 強度が極度に低下する場合がある。 そのため、 反応剤の使用 量はグルコース残基当た り 0 . 1 モル以下とする こ とが特に 好ま しい。 この使用量で、 セルロースの溶解分率 ( S c ) を 9 9 . 0 重量%以上に保持しつつ、 セルロース ドーブのセル ロース含有率 ( C c ) を充分高める こ とができ、 従来のビス コース法よ り反応剤の使用量が大幅に少なく てすむので、 優 れている。
反応剤の添加はセルロース ドープの製造工程の中の適当な 段階で行う こ とができるが、 上記の工程 ( 1 ) の後か ら工程 ( 3 ) の終了前までの間のいずれかの時点で反応剤をセル口 ースス ラ リ ーに加える こ とが好ま しい。
このよ う に して得られる、 セルロースの水酸基の一部が修 飾されているセルロース ドープもまた、 上記式 ( 1 ) を満足 するゼロ 剪断粘度 ( 7? 。) を示 し、 また通常、 そのよ うなセ ルロース ドープの N M R分析において、 セルロースのグルコ ース単位の 6 位の炭素原子が示す緩和時間 ( τ c ) は 1 0 〜 4 0 0 m s であ り 、 セルロースのグルコース単位の 1 位の炭 素原子が示す緩和時間 ( て c ) は 2 0 0 〜 1 0 0 0 0 m s で ある。
以上のよ う なセルロース ドープを、 適当な凝固処理に付す こ とによ り 、 繊維体、 平面状フィ ルム、 チューブ状フィ ルム 中空糸、 粒子、 スポンジ状物またはコーティ ングなどのセル
ロース成形品を得る こ とができる。
凝固処理と しては、 ^燥凝固、 ゲル化凝固及び中和凝固か らなる群か ら選ばれる少な く と も 1 種の凝固処理を用いる こ とが好ま しい。 以下、 これら の凝固処理につき説明する。
(乾燥凝固)
乾燥凝固はセルロース ドープの水分を乾燥させ、 セルロー ス を沈殿させる こ と によ り 、 成形品を得る方法である。 この 方法によ り 得られる成形品は最も緻密で強度が高い上、 物質 透過性、 例えば透水性が著し く 低いという特徴を有する。
例えば、 上記のセルロース ドープか ら乾燥凝固によ り得 ら れた フ ィ ルムの透水性は、 0 . 1 (m2 · hr · kg/cm2)程度で ある。 この こ とは、 上記のフ ィ ルムの透水性は通常市販され てい る逆浸透膜 ( 1 〜 5 (m2'hr 'kg/cm2)程度) よ り 十分 小さ く 、 上記のフ ィ ルムは実質的に完全な遮水性を有する と 見なすこ とができる こ と を意味する。
また、 上記のフ ィ ルムの酸素透過性は 2 3 °C、 相対湿度 6 5 %の とき 5 0 ccZni2 Z 2 4 hrZ atm 程度である。 この こ と か ら、 上記のフ ィ ルムは気体透過性が低い (即ちガスバ リ ァ 性に優れている) こ とがわかる。
また上記の成形品は油の浸透性も非常に小さ い。 例えば、 上記のセルロース ドープを用い、 乾燥凝固によって紙の表面 に形成した被膜の耐油性を T A P P I R C — 3 3 8 法に基
づいて測定する と、 キッ ト値 (耐油紙の耐油性の評価値、 こ の値が大きいほど耐油性が高い) は 1 2 以上で、 市販の耐油 紙と比べ極めて高い (キッ ト値については後述の実施例の測 定方法の説明の項目の ( 1 1 ) を参照) 。 このとき、 被膜の 表面はやや疎水性とな り、 水の接触角度は 5 0 ° 以上になる また、 上記のセルロース ドープから乾燥凝固によって得ら れる成形品の強度は、 粘度平均重合度 ( D P c ) 3 5 0未満、 セルロース含有率 ( C c ) 4重量%未満の、 従来のセルロー ス ド一プを乾燥凝固して得られる成形品よ り十分高い。
(ゲル化凝固)
セルロースは苛性ソーダ濃度 6 . 5 〜 1 1 重量%の特定の 濃度の苛性ソーダ水溶液にのみ溶解する。 換言すれば、 セル ロースが苛性ソーダ水溶液に溶解してなる溶液を、 苛性ソー ダ濃度 6 . 5 〜 1 1 重量%の苛性ソーダ水溶液以外の液体に 接触させればゲル化する。 即ち、 苛性ソーダ濃度 6 . 5 〜 1 1 重量%の苛性ソーダ水溶液以外の液体は、 上記のセルロー ス ドープのゲル化剤と して用いる こ とができる。
ゲル化剤と して用いる液体としては、 水または水溶液が好 適に用い られる。 ゲル化剤と して塩の水溶液を用いる場合、 その塩濃度が高く 、 またゲル化温度が低いほど、 得られるセ ルロース成形品は緻密な構造を有し、 機械的強度が高い。
逆に、 高温の水を用いてゲル化させて得られるセルロース
成形品は最も疎な構造を持ち、 機械的強度が低い。 しかしそ の場合でも、 本発明のセルロース ドープにおけるセルロース の粘度平均重合度 ( D P c ) が高いため、 得られる成形品の 機械的強度は、 粘度平均重合度 ( D P c ) 3 5 0 未満、 セル ロース含有率 ( C c ) 4重量%未満の、 従来のセルロース ド ープをゲル化凝固 して得られる成形品よ り十分高い。
(中和凝固)
中和凝固の場合、 中和に用いる酸性水溶液の濃度と温度が 得られる成形品の構造や物性に大きく影響を及ぼす。 よ り濃 度が高く よ り低温の酸性水溶液で凝固させて得たセルロース 成形品ほど、 緻密な構造を有し、 機械的強度が高い。 従って 要求される構造や物性に応じ、 酸性水溶液の濃度や温度を適 宜選択すればよい。
低濃度、 高温の酸性水溶液を用いて凝固させる と、 得られ るセルロース成形品の強度は低下するが、 その場合でも、 粘 度平均重合度 ( D P c ) 3 5 0 未満、 セルロース含有率 ( C c ) 4重量%未満の、 従来のセルロース ドープを中和凝固し て得られた成形品よ り十分高い。
なお酸性水溶液と しては、 硫酸、 酢酸、 チォ硫酸、 亜硫酸 塩酸、 臭化水素酸、 フ ッ化水素酸、 硝酸、 燐酸、 ピロ リ ン酸 メ タ リ ン酸、 ポリ リ ン酸、 次亜リ ン酸、 ト リ フルォロ酢酸、 チォシアン酸などの酸性物質およびそれらの塩の水溶液を用
いる こ とができる。 上記酸性物質およびそれら の塩は、 単独 で用いてもよ く 、 2 種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上のよ う に、 セルロース ドープの凝固処理の種類や、 凝 固の条件を制御する こ と によ り 、 セルロース成形品の構造の 緻密さ と機械的強度を大幅に制御する こ とが可能である。
そして、 いずれの場合でも、 D P c が 3 5 0 以上、 C c が 4重量%以上のセルロース ドープを用いているため、 本発明 のセルロース成形品の強度は、 粘度平均重合度 ( D P c ) 3 5 0 未満、 セルロース含有率 ( C c ) 4重量%未満の、 従来 のセルロース ドープを凝固処理に付して得 られた成形品よ り 十分高い。
また、 本発明のセルロース ドープは有毒な物質を用いずに 製造する こ とができるので、 上記のセルロース を基材とする 可食性成形品 (セルロース系可食体) の製造に適している。
このセルロース系可食体は、 セルロース ド一プと して多糖 類、 ポ リ ペプチ ド及び天然樹脂か らなる群か ら選ばれる少な く と も 1 種の添加剤を含有するセルロース ドープを、 上記の よ う な凝固処理に付すこ と によ り得られる。
可食性成形品を製造する場合も前述の反応剤を用いる こ と はできるが、 この場合は食品加工用 と して認め られている反 応剤、 例えば、 モノ ク ロル酢酸などを使用する こ とが好ま し い
上記のよ うな添加剤を含有するセルロース ドープを得る方 訂正された用紙 (規則 91)
法の例と しては、
i ) 6 . 5 〜 1 1 重量%、 好ま し く は 7 〜 1 0 重量%の苛性 ソーダ水溶液に添加剤を分散または溶解させ、 得られた懸濁 液または溶液を上記のセルロース ド一プと混合する方法、 お よび
i i ) 添加剤を上記のセルロースス ラ リ ーに添加し、 得られ た混合物を上記のセルローススラ リ ーの代わ り に用いて、 上 記の方法でセルロース ドープを調製する方法
を挙げる こ とができる。
上記の添加剤と して使用 し得る多糖の例と しては、 例えば ァラ ビヤガム、 ァラ ビノガラクタン、 アルギン酸、 ガッティガ ム、 カ ラギーナン、 カ ラャガム、 ザン夕 ンガム、 グァーガム コ ンニヤ ク粉、 タマ リ ン ド、 タ ラガム、 ト ラガン トガム、 フ ァーセ レラ ン、 プルラ ン、 ぺクチン、 キチン、 ローカス ト ビ —ンガム、 キシラ ン、 マ ンナンおよび各種デンプン類、 並び にそれらの N a塩、 K塩、 及び C a塩を挙げる こ とができる 上記の添加剤と して使用 し得るポ リ ペプチ ドの例と しては 大豆蛋白、 カゼイ ン、 アルブミ ン、 グロブリ ン、 ゼラチンな どの天然タ ンパク質、 それらの加水分解物、 それらの N a 、 K及び、 C a塩な らびにそれらの加水分解物の N a塩、 K塩 及び、 C a 塩を挙げる こ とができる。
上記の添加剤と して使用 し得る天然樹脂の例と しては、 シ ェ ラ ッ ク樹脂などを挙げる こ とができる。 訂正された用紙 (規則 91)
上記の添加剤は、 単独で用いてもよ く 、 2種以上を組み合 わせて用いてもよい。
以上から明らかなよう に、 本発明のセルロース ドープは、 重合度の高いセルロースを高含有率で含む場合でも安定であ り 、 ゲル化を起こさない。 また本発明のセルロース ドープを 用いる と、 実用に耐える機械的強度を有する繊維やフィ ルム などの再生セルロース成形品を、 有毒物質を大量に用いる こ となく 、 製造する こ とができるので、 工業的に極めて有利で ある。
発明を実施するための最良の形態
以下実施例によ り 本発明を説明するが、 本発明はこれにな ん ら限定される ものではない。 セルロース溶解分率 ( S c ) 、 粘度平均重合度 ( D P c) 、 セルロース粒子の平均粒径 ( m ) 、 セルロースス ラ リ ーの 粘度特性、 セルロース ドープの 7? 。 ( m P a · s ) 、 固体 N M R 、 N M R縦緩和時間 ( m s ) 、 繊維の強度と伸度、 透水 性、 酸素透過性、. 耐油性、 及び水の接触角度の測定は次の測 定方法によ り行なっ た。
( 1 ) セルロース溶解分率 ( S c )
セルロース溶解分率はまずセルロース Z苛性ソーダ水溶液 (セルロース ドープ) 中の未溶解セルロース量 ( R c ) を次 のよ う に測定し下記式 ( 6 ) か ら求めた。 R c の測定は次の よ う に行っ た。 まず、 溶解したセルロースノ苛性ソーダ水 溶液を 8 重量%の苛性ソーダ水溶液で 8 0 倍に希釈し、 その 希釈したセルロース Z苛性ソーダ水溶液 2 m 1 中に存在する 未溶解セルロース粒子の個数を、 米国コール夕一エレク ト ロ 二 ク ス 社 ( C o u l t e r E l e c t r o n i c I n c . ) 製コ一ルターカウ ンター Z M 8 0 で計測 した。 計測は 3 mカゝ ら Ι Ο Ο ΠΙ の範囲において、 Ι Ο ΠΊ間隔で行 つ た。 計測した個数か ら、 下記式 ( 5 ) を用 いてセルロース
苛性ソーダ水溶液 2 0 リ ッ トル中 に存在する 未溶解物の 体積 ( R c ) を m 1 で求めた。 式 ( 5 )
R c = { N 〜ΝιηΧ ( 4 / 3 ) % ( 6. 5 X 2 )
+ N 10 N2。X ( 4 / 3 ) π ( 1 5 X 1 0 2 ) 3+ Ν? 2η0〜Ν 30
X ( 4 / 3 ) κ ( 2 5 X 1 0 -4/ 2 ) + Ν 90 Ν 100
X π (9 5 X 1 0-ゾ 2) 3 } X 8 0 X ( 2 0 X 1 03 / 2)
〔式中、 Ν χ 〜 N y は、 コ ール夕 一カ ウ ン夕 一で計測 し た 8 0 倍に希釈したセルロース ドープ 2 m 1 に含まれる粒径 X ( fi m ) カゝ ら y ( u rn ) の粒子の数である。 〕 式 ( 6 )
S c = ( 1 - R c X S J / ( S 2 X 2 0 - 1 0 3 X C c / 1 0 0 ) )
X 1 0 0
〔式中、 S iはセル口一スの比重 ( 1 . 4 g / c m 3 ) で あ り ;
S 2 はセルロースノ苛性ソーダ水溶液の比重 ( 1 g / c m 3 ) であ り ; そして
C c はセルロースノ苛性ソーダ水溶液中のセルロース含有率 ( w t % ) である。 〕
( 2 ) 粘度平均重合度 ( D P c) 訂正された用紙 (規則 91)
粘度平均重合度は、 まずセルロース カ ドキセン溶液の
[ 7? ] を求め、 ついで下記のブラ ウ ン、 ウィ ク ス ト ローム
( B r o w n , W i k s t r o m) の粘度式 ( E u r o . P o 1 y m . J , 1 , 1 ( 1 9 6 6 ) 記載) に代入して得た粘 度平均分子量 M wを 1 6 2 で割って粘度平均重合度 ( D P c) と した。 なお、 カ ドキセンの調製方法は上記 E u r o . P o l y m. J , 1 , 1 ( 1 9 6 6 ) に記載されている。
[ 7) ] = 3 . 8 5 X 1 0 -2 X M w 0- 76
( 3 ) セルロース粒子の平均粒径 ( m)
まず、 セルローススラ リーを蒸留水でセルロース含有率が 0 . 1 重量%になるよう に希釈し、 超音波処理で粒子を分散 させた後、 レーザ一回折式粒度分布測定装置 ( S A L D— 1 1 0 0 、 日本国島津製作所製) を用いて、 分散したセルロー スの粒度分布を測定し、 分布から求めた粒子全体の体積に対 して積算体積が 5 0 %になる ときの粒子の球形換算直径を平 均粒径と した (日本国特開平 3 — 1 6 3 1 3 5 号公報に詳細 記載) 。
( 4 ) セルローススラ リ ーの粘度特性
測定は、 H A A K E 粘度計 RheoStressRSlOO 型測定機 ( cone/plate sensor system, Angle 4 , Diameter 35mm;
を用いて行なっ た。 測定モー ドは s e s s ramp mode で、 応 力範囲 :! 〜 4 5 0 P a、 測定時間 3 0 0 s e c 、 測定温度 2 O t:である。 この ときの粘度 ( 7? s ) -応力 ( ひ s ) 曲線にお いて、 図 1 に示すよ う に急激に粘度低下を起こす応力を、 降 伏応力 ひ τ と した。
( 5 ) セルロース ドープのゼロ剪断粘度 7? 。
測定は、 H A A Κ Ε粘度計 RV— 1 2 型測定機 ( 2重円筒型、 ローター : MV _ I ) を用いて行なっ た。 測定温度は 1 0 で あ り 、 さ まざまな剪断速度で粘度を測定し、 剪断速度を 0 sec に外挿し 7? 。を求めた。
( 6 ) セルロースス ラ リ ーの固体 N M R
セルロースス ラ リ ーの固体 1 3 C — N M Rスぺク トル測定 は、 米国 B r u k e r社製 D S X 4 0 0 型スぺク ト ロ メータ 一を用い、 C P ZM A S法を用いて行なっ た。 コ ンタ ク ト 夕 ィ ム 1 m s 、 ノ、。ルス間隔 5 s 、 9 0 。 ノ、。ルス 4 . 8 s 、 積 算回数 3 0 0 0 回、 回転速度 4 0 0 0 H z である。
ス ラ リ ー中のセルロースのグルコース単位の 4位の炭素原 子 ( C 4 ) の高磁場成分に対応する ピーク と低磁場成分に対 応する ピー ク の分離は、 上記スぺク ト ロ メ ータ 一に付属の curve f i tt ing 用 プロ グラム "Win Fi t" を用 いて、 各々 の ピーク をガウス型の分布関数に近似して行なっ た。
( 7 ) N M R縦緩和時間
セルロース ドープについて N M R縦緩和時間 て c測定を、 日本国 日本電子社製 J N M— L A 4 0 0 型測定機を用いて行 なった。 観測周波数は 4 0 0 M H z 、 積算回数は 5 0 0 回、 温度は 1 0 で、 D 2〇を二重管の内管、 セルロース ドープ を外管に入れ、 プロ ト ンデカ ップリ ング法で測定した。
( 8 ) 繊維の強度と伸度 .
J I S L 1 0 1 3 — 1 9 8 1 に従って測定した。
( 9 ) コーティ ング紙の透水性
面積 2 0 c m 2 のコ一ティ ング紙に l atm の圧力をかけ 2 5 でで、 所定時間に通過した水の体積を測定した。
( 1 0 ) コーティ ング紙の酸素透過性
J I S K 7 1 2 6 (モ コ ン法) に準拠 し 、 測定面積 4 c m 2で行なった。
( 1 1 ) コーティ ング紙の耐油性
T A P P I R C 3 3 8 法に基づき測定した。 この方法は 所定組成の油をコーティ ング紙に滴下し、 コーティ ング紙に 該油が染み込むか染み込まないかを目視で測定する方法であ
る。 染み込む能力の小さい組成の油から順に 1 〜 1 2 のナン バーが振り 当てられており、 滴下して染み込まない油のナン バーのう ち最も大きいナンバーをキッ ト値と称する。
( 1 2 ) 水の接触角度
日本国協和界面科学株式会社製の C B V P — A 3式表面張 力計を用いて測定した。 サンプルを水平に設置し、 該表面張 力計に付属のマイ ク ロ ピペッ トで、 2 mm 3 、 2 5 " の水を サンプルに付着させ、 付着した水滴の接触角を測定した。 実施例 1 〜 4 、 比較例 1 〜 4
実施例 1 〜 4 では、 スラ リ ーの降伏応力 σ τ と D P c の関 係を示す。
サルフ アイ ト法溶解パルプ (日本国日本製紙製) を爆砕法 によ り 加水分解し粘度平均重合度 ( D P c) の異なるセル口 ースを得た。 これらの重合度調製したセルロース及び爆碎無 しのも との溶解パルプを、 セルロース固形分濃度 8 . 5 重 量%、 苛性ソーダ濃度を 2重量%になるよう に調製し、 苛性 ソーダ存在下でメディ ア式湿式粉砕機 (パールミル R L 5 - V S 、 日本国ァシザヮ (株) 製) で 8 分間湿式粉碎し、 平均 粒径が 1 0 〜 1 3 mのアルカ リ セルローススラ リ ーを得 た。 得られたセルローススラ リ ーの D P c が 3 5 0 、 4 5 0 、 5 4 0 、 7 2 0 のものを実施例 1 〜 4 とする。 比較例と して
同様の操作を苛性ソーダ無し (水媒体) でおこなっ た。 水媒 体のセルロースス ラ リ ー (水 Zセルローススラ リ ー) の D P c が 3 5 0 、 4 5 0 、 5 4 0 、 7 2 0 のものを比較例 1 〜 4 とする。
実施例 1 〜 4では上記の式 ( 4 ) における k 2 がー 0 . 0 5.であ り 負の値であっ た。 これは、 D P c が高いほど、 急激 に粘度低下を示す降伏応力 ひ τ が低い こ と を示してお り 、 温 度上昇を押さえて低温で均一混合溶解するに極めて適してい る。 この特性は、 特に高 D P c のセルロースの溶解に際し有 利 に作用する 。 ま た非晶度 χ am = I high/ ( I high + I i0ff) = 0. 6 であった。
非晶度 χ am はセルロースの分子内水素結合の切断の程度 の指標となる値で、 これが 0 . 5 よ り 大きいこ とは、 実施例 1 〜 4 のアル力 リ /セルロースス ラ リ ー中のセルロースの分 子内水素結合の切断の程度が高く 、 セルロース分子の立体配 座の 自 由度が高い こ と を示している。 これは式 ( 4 ) の k 2 が負の値を持つ こ と に関係している。 上記のよ う な状態のセ ルロースが溶解する とき、 系のェン ト ロ ピーは充分に高く な る と考え られる こ とか ら、 実施例 1 〜 4 のセルロースス ラ リ 一中のセルロースは容易に溶解する と考え られる。
上記したよ う に、 セルロースのアル力 リ 水溶液への溶解速 度は、 セルロースの銅ア ンモニア水溶液や力 ドキセ ン水溶液 な どへの溶解速度に比べて著し く 遅い。 このため、 セルロー 訂正された用紙 (規則 91)
スをアルカ リ 水溶液に添加した後撹拌せずに静置したま まで は、 見かけ上溶解は停止 し、 セルロースの溶解分率 ( S c ) は 5 0 %に満たないので、 攪拌によ りセルロースの溶解を促 進する必要がある。 通常、 高速撹拌可能なミキサーな どを用 い、 高速で攪拌すれば、 溶解速度はよ り上がる。 しかし、 高 速撹拌を行う と、 系全体の平均温度は上記の 1 0 以下の温 度に保持されていても、 局所的な発熱が起こる。 そのため、 セルロース ド一プの安定性が低下しゲル化しやすく なる。 ま た、 セルロースのアルカ リ 水溶液に対する溶解度は、 高温に なるほど低下する と い う特性があるので、 上記のよ う な高速 撹拌に伴う局所的な発熱によって、 セルロースス ラ リ ーが加 温される こ とは好ま し く ない。 このよ う な理由によ り 、 本発 明においてはセルロースス ラ リ ーを低速で攪拌する必要があ る。
実施例 1 〜 4 のセルロースス ラ リ ーは、 上記式 ( 4 ) を満 足する。 このこ とは、 実施例 1 ~ 4 のセルロースス ラ リ ーは セルロースの粘度平均重合度 D P c が高く ても粘度が上昇し ない という特性を有する こ と を意味する。 従っ て、 実施例 1 〜 4 のセルロースス ラ リ ーを用いる と、 高速攪拌しな く ても 容易に安定なゲル化しに く いセルロース ドープを得る こ とが できる。
これに対し、 比較例 1 〜 4 において苛性ソーダ無しの水媒
訂正された用紙 (規則 91)
体で湿式粉砕した水/セルローススラ リ ーでは k 2は 0 . 8 で正であ り 、 均一混合溶解が困難にな り 、 得られるセルロー ス 苛性ソーダ水溶液 (セルロース ド一プ) のセルロース溶 解分率 S c は悪い。 これは特に高 D P c のセルロースの溶解 において顕著である。 またこの時の非晶度 χ am は 0 . 4 5 であ り 、 セルロース分子骨格自体の分子運動性も抑制されて いる こ とを示唆している。 念のため、 式 ( 4 ) を次に再度示 す。
σ T = Κ 2 + k 2D P c ( 4 ) 式中 :
σ τは該スラ リ ーの降伏応力 ( P a ) を表わし、
K2は任意常数 ( P a ) を表わし、
k 2 ≤ 0 ( k 2の単位は P a ) そして
D P c は該スラ リ ー中のセルロースの粘度平均重合度 を表わす。 実施例 5 〜 8 、 比較例 5
実施例 5 〜 8 ではセルローススラ リ ーの降伏応力 σ τ と苛 性ソーダ濃度 C N a の関係を示す。
サルフ ァイ ト法溶解パルプ (日本国日本製紙製) を硫酸水 溶液によ り加水分解し D P c 6 0 0 のセルロースを得た。 こ のセルロースに、 苛性ソーダを加えて、 セルロース固形分濃 度が 1 0 . 5重量%、 苛性ソーダ濃度 C N a が 0 . 5 、 2 、
3 、 5 重量%になるよ う に 4種類の混合物を調製し、 苛性ソ ーダ存在下でメディ ア式湿式粉砕機 (アベッ クス ミル A M— 1 、 日本国コ トプキ技研 (株) 製) で 6分間湿式粉砕し、 平 均粒径が 1 0 〜 1 3 mのアルカ リ /セルロースス ラ リ ーを 得た。 苛性ソーダ濃度 C N a が 0 . 5 、 2 、 3 、 5重量%の ものをそれぞれ実施例 5 、 6 、 7 、 8 とする。
得られたアルカ リ セルロースス ラ リ ーの降伏応力 σ τ と 苛性 ソ ー ダ濃度 C N a の 関係 を調べた と こ ろ 、 上記の 式
( 2 ) における は一 0 . 1 6 であ り 負の値であ っ た。 ま たセル ロ ース の骨格 の動 きやす さ の指標で あ る 上記の式 ( 3 ) の非晶度 χ am は実施例 5 〜 8 についてそれぞれ 0. 5
4 、 0. 5 9 、 0. 6 1 、 0. 6 2 であ り いずれも 0. 5 よ り 大 きい。 実施例 1 か ら 4でも示したが、 χ am 力 S 0 . 5 よ り 大 きレゝ こ と、 式 ( 2 ) の k iが負の値を持つ こ とはセルロース 分子骨格が動き易 く なつ ている こ と を示してお り 、 溶解前後 の配置エン ト ロ ピーを考えあわせる と、 これらス ラ リ ーは容 易に溶解しやすい こ とを示唆している。
比較例 5 と して、 実施例 5 〜 8 と同様にサルフ アイ ト法溶 解パルプ (日本国 日本製紙製) を硫酸水溶液によ り 加水分解 し D P c 6 0 0 のセルロース を得、 こ のセルロース に、 苛性 ソーダを加えて、 セルロース固形分濃度が 1 0 . 5 重量%、 苛性ソーダ濃度 C N aが 0 . 5 、 2 、 3 、 5 重量% になるよ う に 4種類の混合物を調製し、 攪拌機 ( T . K . ホモミ キサ 訂正された用紙 (規則 91)
一 :日本国特殊機化製) を用いて攪拌し、 実施例 5 〜 8 と同 じ組成のアルカ リ Zセルローススラ リ ーを得た。 降伏応力 ひ τ と苛性ソーダ濃度 C N a の関係を調べたが、 k i は 0 . 1 1 で正であっ た。 また、 いずれの非晶度 χ am も 0 . 5 よ り 小さ く セルロース骨格が動きにく いこ と示し、 溶解性が悪い こ とをうかがわせた。 比較例 6 .
サルフ ァイ ト法溶解パルプ (米国アラスカパルプ社製、 A L A P U L — T ) に、 苛性ソーダを加えて、 セルロース固形 分濃度 3 重量%、 苛性ソーダ濃度 C N aが 2 重量%および 4 重量%になるよう に 2種類の混合物を調製し、 日本国増幸産 業 (株) 製の摩砕機 (スーパーグライ ンデル) で粉砕した。 この時回転数は 1 5 0 0 111、 砥石の間隔 4 0 ; m、 粉砕 回数は 5 回である。 これらアルカ リ /セルローススラ リーを 遠心脱水機でセルロース固形分濃度 8 . 5重量%まで濃縮し、 σ τ を測定しょ う と したが、 いずれもほとんど流動性を示さ ない固形物状であ り 、 粘度測定は不可能であった。 これはミ ク ロフイ ブリ ルがネッ ト ワーク状を呈し著しく 粘度が上昇し たためと考えられる。 上記したよう に、 粉砕には本発明のよ う に、 セルロース繊維を切断し粒子状にするものと、 本比較 例 6 のよう にフィ ブリル化する ものがあるが、 フィ ブリル化 の場合はフイ ブリ ルがネッ ト ワーク を形成するため、 得られ
た懸濁液の粘度が著し く 高く 、 固形分濃度が低く てもゲル状 を呈しているため、 溶解時に溶媒である苛性ソーダ水溶液と の混合が難し く 、 溶解用 (セルロース ドープ製造用) のセル ロースス ラ リ ーと しては適していない。
セルロース固形分濃度 8 . 5 重量% まで濃縮したセル口一 スス ラ リ ーを次に示す実施例 1 5 と同様の方法で苛性ソーダ 水溶液を加えてセルロース含有率 C c 5重量%、 苛性ソーダ 濃度 C N a 7 . 6 重量%になるよ う にセルロースを溶解し、 セルロース /苛性ソーダ水溶液 (セルロース ドープ) を得た が、 セルロース溶解分率 S c は 9 6 %以下にと どま り 溶解性 は明 らかに悪かった。 またセルロース 苛性ソーダ水溶液の ゼロ剪断粘度 7] 。 は 5 2 0 0 0 mP a · s (苛性ソーダ濃度 C N a 2 重量% のもの) 、 4 4 0 0 0 mPa' s (苛性ソーダ濃度 C N a 4重量%のもの) であ り 、 上記式 ( 1 ) を満足しない高 い粘度を示した。
実施例 9 〜 1 5 、 比較例 7 〜 1 8
実施例 1 〜 4 と同様に して得られた D P c 3 5 0 、 4 5 0 、 5 4 0 、 6 4 0 、 7 2 0 のセルロースス ラ リ ー (苛性ソーダ 濃度 2 重量%のセルロースス ラ リ ー) を 0 °Cに冷却し、 これ に— 1 0 °Cに調整した苛性ソーダ濃度が 1 5 . 6 重量%及び 3 3 . 7 重量%の苛性ソーダ水溶液を添加し、 セルロース含
有率 C c 5 および 7 重量%、 苛性ソーダ濃度 7 . 6 重量%と した後、 低速撹拌型混練機 ( 2軸ニーダー) を用いて、 攪拌 のせん断速度 5 0 0 / s e c , 撹拌装置の攪拌子の先端速度 でみた攪拌速度 I S mZm i n , — 4 で 1 0 分間撹拌し、 セルロース含有率 C c 5 および 7 重量%、 苛性ソーダ濃度 7 6 重量%、 粘度平均重合度 D P c 3 5 0 、 5 4 0 、 7 2 0 の セルロース ド一プを得た。 D P c4 5 0 、 D P c 6 4 0 、 D P c 7 2 0 については C c 7 重量%での操作はお こなわなかつ た。 得られたセルロース ド一プ中のセルロース溶解分率 S c は 9 9 . 0 %以上であ り溶解性は良かった。 得られた結果を 表 1 〜 3 に示した。 実施例 9 〜 1 5 のすべてにおいて、 ゼロ 剪断粘度 ? o は式 ( 1 ) を満足していた。 1 つの例と して C c 5 重量%のセルロース ド一プにおける D P c と 7? 0の関係 を図 3 に示す。 実線で囲まれた範囲が式 ( 1 ) の範囲内を示 すが、 図 3 から明 らかなよう に実施例 9 、 1 1 、 1 2 、 1 4 および 1 5 で得られたセルロース ドープの 77 Q はすべて図 3 における実線で囲まれた範囲内であった。 またこれらのセル ロース ドープを 1 0 °Cで静置したと ころ、 ゼロ剪断粘度?? 0 は 1 週間以上変化なく ド一プ状態は安定であった。
比較例 7 , 8 , 9 と して、 実施例 1 、 3 、 4で得られた D P c 3 5 0 、 5 4 0 、 7 2 0 のセルロースス ラ リ ーを C c 3 重量%になるよう に実施例 9 5 と同様に溶解し、 ゼロ剪 断粘度 。を測定したが の比較例 7 , 8 , 9 の項目
示すよう に式 ( 1 ) の範囲外であった。 念のため、 式 ( 1 ) を次に再度示す。
, 7? 0 = k C cm X D P cp ( 1 ) 式中 :
7) 0 はセルロース ドープのゼロ剪断粘度. ( mP a · s ) を 表わし、
C c はセル ロ ー ス ド ー プのセル ロ ー ス 含有率 (重 量% ) を表わし、
D P c はセルロース ド一プ中のセルロースの粘度平均 重合度を表わし、
k = 3 . 9 X 1 0 — 1 1 、
5 ≤ m ≤ 7 , そして
3 ≤ ρ ≤ 4
である。 また D P c 3 5 0 、 C c 5重量% (実施例 9 ) 、 D P c 5 4 0 、 C c 5 重量% (実施例 1 2 ) 、 D P 7 2 0 、 C c 5 重 量% (実施例 1 5 ) のセルロースのグルコース単位の 6位の 炭素原子 ( C 6 ) が示す N M R縦緩和時間 τ c 6がそれぞれ 1 4 0 、 1 5 0 、 1 9 0 m s 、 セルロースのグルコース単位 の 1 位の炭素原子 ( C 1 ) が示す縦緩和時間 て c 1 が 3 0 0 、 3 0 0 、 5 2 0 m s であった。
比較例 1 0 〜 1 7 と して、 比較例 1 、 3 、 4 で得た D P c
3 5 0 、 5 4 0 、 7 2 0 の水媒体で湿式粉砕して得た、 ス ラ リ ー (水/セルロースス ラ リ ー) を 0 に冷却し、 これに — 1 0 に調整した苛性ソーダ濃度 1 1 . 7重量%、 1 8 . 5重量%及び 4 3 . 1 重量%の苛性ソーダ水溶液を添加し、 セルロース含有率 3重量%、 5重量%および 7 重量%、 苛性 ソ一ダ濃度 7 . 6重量% と した後、 攪拌のせん断速度 1 7 0 0 0 / s e c 、 撹拌装置の攪拌子の先端速度でみた攪拌速度 1 0 2 0 m/m i nで高速攪拌して ドープを得たが、 表:! 〜 3 中 の比較例 1 0 〜 1 7 に示すよ う に、 7? 。 は式 ( 1 ) の範囲外 であった。 D P c が 3 5 0 以上でかつセルロース含有率が 5 重量%以上のものはいずれも 77 。 が高い方向に、 式 ( 1 ) の 範囲か ら外れ、 これは溶解後ただち にゲル化が進行している こ と を示唆している。 例えば、 D P c 5 4 0 、 C c 7 重量% (比較例 1 5 ) の溶解直後の 7?。 は 4 9 0 0 O mPa' s であつ たが、 1 日経過後ゲル化し、 溶液状を保っ ていなかっ た。
また、 D P c 7 2 0 、 セルロース含有率 C c 5 重量% (比 較例 1 7 ) のセル口ースのグルコース単位の 6位の炭素原子 ( C 6 ) が示す N M R縦緩和時間 ( r c 6 ) 力 4 1 0 m s 、 1 位の炭素原子 ( C 1 ) が示す縦緩和時間 ( て c 1 ) 力 S 1 7 0 m s であ り 、 セルロース分子主鎖の運動が著し く 拘束され ている こ と を示唆してお り 、 溶解状態が優れていない こ と を 示している。
また比較例 1 8 と して、 湿式粉砕無しで、 組成は実施例 1 訂正された用紙 (規則 91)
5 と同 じ、 D P c 7 2 0 、 苛性ソーダ濃度 2 重量%のセル口 ース 苛性ソーダ懸濁液を調製し (平均粒径 4 5 m ) 比較 例 1 0 〜 1 7 と同様に高速攪拌して溶解して C c 5重量%の セルロース 苛性ソーダ水溶液を得よう と したが著しいゲル 化のため不可能であった。
C c : 3 重量%の場合
(〇 : 式 ( 1 ) を満足する X : 満足しない)
( C c : 5 重量%未満の ドープでは良好な成形体が得られな い)
表 2
C c : 5 重量%の場合
(〇 : 式 ( 1 ) を満足する X : 満足しない) 実施例 1 6 〜 1 8 、 比較例 1 9
実施例 1 6 〜 1 8 では溶解に対する C N aの影響を示す
実施例 5 、 7 、 8 で得たセルロース固形分濃度 1 0 . 5 重 量%、 C N aが 0 . 5 重量%、 3重量%、 5 重量%のセル口 ーススラ リ ーを 0でに冷却し、 これに— 1 0 °Cに調整した苛 性ソーダ濃度 2 1 . 8 重量%、 1 6 . 8重量%及び 1 2 . 8 重量%の苛性ソーダ水溶液を添加し、 組成をセルロース含有 率 7 重量%、 苛性ソーダ濃度 7 . 6重量%と した後、 攪拌機 ( T . K . ホモミキサー : 日本国特殊機化製) を用いて攪拌 の剪断速度 2 0 0 0 / s e c , 攪拌装置の攪拌子の先端速度 でみた攪拌速度 1 2 O mZ分、 一 4 t:で 1 0分間低速攪拌し ドープを得た。 C N aが 0 . 5 重量%、 3重量%、 5重量% の ドープを実施例 1 6 、 1 7 、 1 8 とする。
実施例 1 6 〜 1 8 のセルロース溶解分率 S c はいずれも 9 9 . 0重量%以上であ り 、 溶解性は良好であった。 ゼロ剪断 粘度 7? 。はいずれも式 ( 1 ) を満足し、 ドープは 1 週間以上 安定であった。 溶解性を示すもう一つの指標である、 セル口 ースのグルコース単位の 6位の炭素原子 ( C 6 ) が示す縦緩 和時間 ( て c 6 ) とセルロースのグルコース単位の 1 位の炭 素原子 ( C 1 ) が示す縦緩和時間 ( て c 1 ) の値も適切であ つた。
比較例 1 9 と して、 C N aが 6 . 5重量%のスラ リ ーを実 施例 1 6 〜 1 8 と同様の方法で調製し、 同様に してセル口一 ス含有率 7 重量%、 苛性ソーダ濃度 7 . 6重量%の ドープを 得た。
比較例 1 9 は 77 。が式 ( 1 ) から高粘度側にずれ、 ゲル化 が起こ りやすいこ とを示している。 実際 ドープは不安定で、 わずか 1 日程度でゲル化した。 さ ら に て c 6 と て c 1 の値も 不適切であった。 表 4
縦 緩 和 時 間
( ms )
C N a (重量% ) ΤΊ 0 ドープ安定性 て C 6 て C 1
(mP a · s )
0 . 5 (実施例 1 6 ) 25000 1 週間以上安定 180 300
3 (実施例 1 7 ) 11800 1 週間以上安定 1 0 450
5 (実施例 1 8 ) 19500 1 週間以上安定 170 370
6 . 5 (比較例 1 9 ) 46000 1 日後ゲル化 560 190
実施例 1 9 〜 2 2
実施例 1 9 〜 2 2 では溶解に対する反応剤の影響を調べた, サルフ ァイ ト法溶解パルプ (日本国日本製紙製) を爆砕法 によ り加水分解した後、 セルロース固形分濃度が 1 0 . 5重 量%、 C N aが 4重量%になるよう に調製し、 苛性ソーダ存 在下でメディ ア式湿式粉砕機 (アベッ クス ミル A M— 1 、 日 本国コ ト プキ技研 (株) 製) で 6 分間湿式粉碎し、 D P c 5 4 0 、 平均粒径 1 2 mのセルローススラ リ ーを得た。 該ス ラ リ ー 1 9 0 . 4 8 g を 3 0 0 m l ビ一カーにと り、 0 °Cに 調整した後、 あ らかじめ下記の添加剤 (添加量と して、 0 . I m o l Zグルコース単位 l m o l ) の入った一 1 0での苛 性ソーダ濃度 1 9 . 1 2重量%の苛性ソーダ水溶液 5 9 . 5 2 g を加え、 全体量 2 5 0 g、 組成をセルロース含有率 8 重 量%、 苛性ソーダ濃度 7 . 6 重量%、 添加剤の量 0 . l m o 1 Zグルコース単位 l m o l と した後、 攪拌機 ( T . . ホ モミキサー : 日本国特殊機化製) を用いて攪拌の剪断速度 2 0 0 0 / s e c 、 攪拌装置の攪拌子の先端速度でみた攪拌速 度 1 2 0 m 分、 一 4 で 1 0分間低速攪拌し、 ドープを得 た。 反応剤はアク リ ロニ ト リル、 アク リルアミ ド、 二硫化炭 素、 プロ ピレンオキサイ ドであ りそれぞれ実施例 1 9 、 2 0 2 1 、 2 2 と した。
表 5
式 ( 1 ) における 7) 。の範囲 (mPa. s ) : 10573〜 105810 実施例 2 3 , 2 4 、 比較例 2 0 、 2 1
セルロース成形品と しての繊維の製造例を示す。
サルフ ァイ ト法溶解パルプ (日本国 日本製紙製) に苛性ソ ーダを加えて、 セルロース固形分濃度が 8 . 5 重量%、 C N a が 4 重量%になるよ う に混合物を調製し、 苛性ソーダ存在 下でメディ ア式湿式粉碎機 (アベッ クス ミル A M— 1 、 日本 国コ ト プキ技研 (株) 製) で 6 分間湿式粉砕し、 D P C 7 2 0 、 平均粒径が 1 2 mのセルローススラ リ ーを得た。 該ス ラ リ ーを 0 でに冷却し、 これに— 1 0 に調整した苛性ソー ダ濃度 1 2 . 7 5 重量%の苛性ソーダ水溶液を、 ス ラ リ ー 1 0 重量部に対し 7 重量部添加し、 セルロース含有率 5 重量% 苛性 ソーダ濃度 7 . 6 重量% と した後、 低速撹拌型混練機 ( 2 軸二一ダー) を用いて攪拌のせん断速度 5 0 0 Z s e c 撹拌装置の攪拌子の先端速度でみた攪拌速度 1 5 mZm i n 一 4 °Cで 1 0 分間撹拌し、 セルロース含有率 5 重量%、 苛性 ソーダ濃度 7 . 6 重量%の ドープを得た。
得られたセルロースノ苛性ソーダ水溶液 ( ドープ) を真空 脱泡後 0 . 0 8 m m φ の孔が 1^0 0個空いたノズルから、 一 5 °Cの硫酸濃度 2 5 重量%の硫酸水溶液の入った長さ 2 5 c mの槽に吐出量 3 0 . 2 m 1 / m i n (吐出速度 δ Ο ηιΖιτι i n ) で吐出させて該水溶液中で凝固させながら、 凝固して 得られた繊維体を 6 O m/m i nの速度で引き取り 、 水洗ェ 程を経て 1 2 0 の熱ロール上で乾燥させて、 6 0 m/min の 速度で巻き取った。 これを実施例 2 3 とする。 また吐出量を 5 0 . 3 m 1 / m i n (吐出速度 l O O m/min) に変え 1 0 0 m/min の速度で同上の凝固、 水洗、 乾燥をおこなった。 こ れを実施例 2 4 とする。 また比較のため、 8 . 5 k g / c m 2 の飽和水蒸気で 4分処理した加水分解処理パルプから 同上の条件で湿式粉砕し D P c 3 1 0 のス ラ リ ーを得、 さ ら に溶解、 紡糸をおこなった。 これを比較例 2 0 および 2 1 と する。
得られた繊維の強度と伸度を表 6 に示す。 表 6
実施例 2 3 実施例 2 4 比較例 2 0 比較例 2 1 卷 き 取 り 6 0 m/m i n 1 0 0 m/m i n 6 0 m/m i n 1 0 0 m/m i n 速度
強 度 2 . 6 2 . 9 1 . 5 糸切れのため
(g/d) 紡糸不能 伸 度 1 6 . 8 1 3 . 1 1 1 . 8 糸切れのため ( % ) 紡糸不能
実施例 2 3 および実施例 2 4 の高 D P c の ドープから得た 繊維は 2 g Z d (デニール) を越える強度があるのに対し、 比較例 2 0 の D P c が低い ドープから得た繊維の強度は低か つた ( 1 . 5 g / d ) 。 この値 ( 1 . 5 g Z d ) はレギユラ 一ビスコース レーヨ ンよ り も低い値である。
また比較例 2 1 では凝固過程のゲル繊維の強度が低いため . 巻き取り速度 1 0 O mZm i nでは糸切れのため紡糸できな かった。 レギュラービスコースフィ ラメ ン トの生産では巻き 取り速度 1 0 O m/m i nが最低速度レベルであ り これよ り 低い紡糸速度は生産性から見て現実的ではない。 実施例 2 5 〜 2 7 、 比較例 2 2 、 2 3
セルロース成形品と しての平面状フィ ルムの製造例を示す, 実施例 9 、 1 2 、 1 5 と同様の方法にて、 セルロース含有 率 5 %、 苛性ソーダ濃度 7 . 6重量%の D P c 3 5 0 、 D P c 5 4 0 、 D P c 7 2 0 の ドープを得た (それぞれ実施例 2 5 、 2 6 、 2 7 とする) 。 比較と して D P c 2 0 0 、 D P c 3 1 0 の ドープも同様の方法で得た (それぞれ比較例 2 2 、 2 3 と する) 。
得られたそれぞれの ドープを真空脱泡後、 ガラス板上に 5 O O Ai mの厚さにキャス ト し、 2 5重量%、 _ 5 °Cの硫酸水 溶液で 5 分間凝固した後、 十分水洗しゲルフィ ルムを得た。 得られたゲルフィ ルムの強度を測定した。 実施例 2 5 、 2 6
2 7 、 比較例 2 2 、 2 3 によ り得られた結果を図 2 に示す。 D P c 2 0 0 と D P c 3 1 0 の比較例はいずれも強度 4 0 k g Z c m 2以下で低強度であった。 このゲル強度レベルでは、 工業的規模で生産性良く 繊維やフィ ルムを製造する こ とは困 難である。 あるいは日本国特開平 7 — 2 7 8 9 4 1 号公報に 開示されているよ うな製造工程における発生張力を著しく低 減できう る特殊な装置が^要であった。 D P c を 3 5 0 にす る こ とで急激にゲル強度は上昇し D P c 3 1 0 の約 2 倍とな つた。 また D P c 7 2 0 ではゲル強度は D P c 3 1 0 の 4倍に なった。
実施例 2 7 の方法で得た D P c 7 2 0 の ド一プを脱泡後、 ガラス板上に 5 0 0 mの厚さ にキャス 卜 し、 加熱し水分率 5 重量%以下まで乾燥し、 乾燥凝固させた。 該フィ ルムを水 洗、 乾燥しフィ ルムを得た。 この乾燥フィ ルムの強度は 1 8 0 0 k g Z c m 2を越え、 レギュ ラーセロフ ァ ンフ イ リレムよ り はるかに高い値であった。 実施例 2 8 〜 3 0
多糖類またはポリ ペプチ ドを混合した ドープからの平面状フ イ ルムの製造例
サルフ ァイ ト法溶解パルプ (米国 R a y 0 n i e r 社製、 C E L L U N I E R - F ) をセルロース固形分濃度が 8 . 5 重量%、 C N aが 2重量%になるよう に調製し、 苛性ソーダ
存在下でメディ ァ式湿式粉砕機 (アベッ クスミル A M— 1 、 日本国コ ト プキ技研 (株) 製) で 6 分間湿式粉砕し'、 D P c 6 2 0 、 平均粒径が 1 0 mのスラ リ ーを得た。 該スラ リ ー にデンプン、 カゼイ ンおよびコ ラーゲンを別々 に加えて 3種 類の混合物を得て、 0 t:に冷却した後、 一 1 0 °Cの苛性ソー ダ濃度 3 0 重量%の苛性ソーダ水溶液を加え、 組成をセル口 —ス含有率 4重量%、 デンプン、 カゼイ ンまたはコラーゲン 4 重量%、 苛性ソーダ濃度 7 . 6 重量% と した後、 攪拌機 ( T . K . ホモミキサー : 日本国特殊機化製) を用いて攪拌 の剪断速度 2 0 0 0 / s e c , 攪拌装置の攪拌子の先端速度 でみた攪拌速度 1 2 O mZ分、 一 4 °Cで 1 0分間低速攪拌し 3種類の ド一プを得た。 デンプンを混合したもの、 カゼイ ン を混合したもの、 コ ラーゲンを混合したものをそれぞれ実施 例 2 8 、 2 9 、 3 0 とする。 得られた 3種類の ドープを真空 脱泡後、 ガラス板上に 5 0 O z mの厚さにキャス ト し、 2 5 重量%、 一 5での硫酸水溶液で 5分間凝固した後、 水洗、 乾 燥して平面状フィ ルムを得た。 デンプンを混合した実施例 2 8 のフ ィ ルム、 カゼイ ンを混合した実施例 2 9 のフィ ルム、 コ ラーゲンを混合した実施例 3 0 のフィ ルムの乾燥強度はそ れぞれ 1 1 0 0 、 7 7 0 、 1 0 5 0 k g Z c m 2であ り 、 柔 軟性にも優れるものであった。 またいずれのフィ ルムも食感 に優れていた。
実施例 3 1 、 比較例 2 4
セルロース成形品と してのチューブ状フィ ルムの製造例を 示す。
サルフ アイ ト法溶解パルプ (ノリレゥエー国 B O R R E G A A R D社製、 D E R I V A T L V — U ) に苛性ソーダを加 えて、 セルロース固形分濃度 8 . 5 重量%、 C N a を 4 重 量%になるよう に混合物を調製し、 苛性ソーダ存在下でメデ ィ ァ式湿式粉砕機 (アベッ クスミル A M— 1 、 日本国コ トブ キ技研 (株) 製) で 6 分間湿式粉砕し、 D P c 6 6 0 、 平均 粒径が 1 1 mのスラ リ ーを得た。 該スラ リ ーを 0 に冷却 した後、 一 1 0 °Cの苛性ソーダ濃度 1 6 . 2重量%の苛性ソ —ダ水溶液を加え、 組成をセルロース含有率 6重量%、 苛性 ソーダ濃度 7 . 6 重量% と した後、 攪拌機 ( T . K . ホモミ キサー : 日本国特殊機化製) を用いて攪拌の剪断速度 2 0 0 0 / s e c 、 攪拌装置の攪拌子の先端速度でみた攪拌速度 1 2 0 m 分、 — 4 で 1 0分間低速攪拌し、 ド一プを得た。 凝固液を入れた槽中に上方に向けて設けられた円状ス リ ッ ト ノズルから、 得られた ドープを凝固液中に吐出線速度 1 5 m /m i nで上方に垂直に吐出し、 3 O m/m i nの速度で上方 に引き取った。 円状ス リ ッ ト ノズルの直径は 2 0 m m、 ス リ ッ ト幅は 5 0 0 / mである。 凝固液は 2 5重量%。 ー 5での 硫酸である。 円状ス リ ッ ト ノ ズルの中央には凝固液槽の液面
よ り も少し上まで延びる内管が設置してあ り 、 内管と凝固途 中のチューブ状フィ ルム内面の間に凝固液が導入される、 こ の凝固液は内管の上端まで上昇して内管の内側にオーバーフ ローして落下して排出される。 内管の上端の位置は凝固途中 のチューブ状フィ ルムの外面に接する凝固液槽の液面よ り も 高いので、 凝固途中のチューブ状フィ ルムの内側の凝固液面 が外側の凝固液面よ り高く な り、 これによつて、 チューブ状 フィ ルムの外側の凝固液面よ り高い部分で、 凝固途中のチュ —ブ状フィ ルムは、 その内側の凝固液によ り 内側から外側に 圧力がかかって若干膨れる。 この成膜方法によると、 得られ るフィ ルムにおけるセルロースの分子配向の等方性を向上さ せる こ とができる。 中和凝固したチューブ状フィ ルムは水洗 後乾燥するが、 乾燥過程ではチューブ状フィ ルム内部に空気 が加圧状態で入った状態で乾燥する。 この操作によ り 、 よ り 等方的な配向を持ったフィ ルムが得られる。 これを実施例 3 1 とする。 実施例 3 1 では製膜方向での強度が 1 4 7 0 k g / c m 2 , 円周方向での強度が 1 3 4 0 k g / c m 2のチュー ブ状フ ィ ルムが得られた。 比較例 2 4 と して D P c 3 1 0 の ドープか らチューブ状フィ ルムの製膜を試みたが凝固過程の ゲルフィ ルム強度が低いため、 安定に製膜できなかった。 実施例 3 2 、 3 3 、 比較例 2 5
セルロース成形品と してのスポンジの製造例を示す。
上記チューブ状フィ ルムの製造例と同様の方法にて ドープ を得た。 得られた ドープ 3 0 0 g を 1 0 X:に調製し、 そこに、 平均繊維長 5 mm、 太さ 1 デニールのポ リ エステル繊維を 4 g 平均粒径 3 mm の結晶芒硝 5 0 0 g またはメタ けぃ酸ナ ト リ ゥム九水和物 ( N a 2 S i O 3 * 9 H 2 O ) 5 0 0 g を添加 し混練した。 得られた混練液をブロ ッ ク状に成形し、 9 0で でゲル化させた後、 硫酸水溶液で中和し、 水洗、 乾燥を経て スポンジを得た。 これを実施例 3 2 、 3 3 とする。 比較例 2 5 と して、 D P c 3 1 0 の ド一プか ら同 じよ う にしてスポン ジを得た。 実施例 3 2 、 3 3 は D P c が高いため湿潤状態で も十分な強度を保持していたが、 比較例 2 5では湿潤状態で 容易に引きちぎれ実用的ではなかった。 実施例 3 4〜 3 6 、 比較例 2 6 、 2 7
セルロース成形品としてのコーティ ングの製造例を示す。 上記チューブ状フィ ルムの製造例と同様の方法にて ドープ を得た。 得られた ドープを 2 5 0 gノ m 2の高密度紙にセル ロース換算で 5 重量% (対紙) 付着するよう にロールコーテ イ ングした。 コーティ ングした高密度紙を温度 9 0での熱口 ールで乾燥凝固 した。 その後 2 O t:、 2 0重量%の硫酸水溶 液で中和した後、 水洗し、 9 0 の熱ロールで乾燥し塗工成 形物を得た。 これを実施例 3 4 とする。 結果を表 7 に示した 実施例 3 4 の透水性は原料高密度紙の 1 / 1 0 0 0 0程度
まで大幅に低下した。 この値は通常市販されている逆浸透膜 ( 1 〜 5 Z (m2'hr -kg/cm2)程度) よ り十分小さい値であ り、 実質的には完全な遮水性を持つ。 ガスバリ ア性も優れてお り 酸素透過性は 2 3 で、 相対湿度 6 5 % の と き 4 0 1112 / 2 4 h rノ a t m であった。 また耐油性も非常に優れていた。 耐 油性を T A P P I R C - 3 3 8法に基づき測定したと ころ、 キッ ト値は 1 2 以上であ り 、 最高レベルの耐油性であった。 表面はやや疎水性とな り 、 水の接触角度は 5 5 ° であった。
このコーティ ング紙からコ ップを形成し、 熱湯を注いだが 異臭は全く 感じ られなかった。 透水性が低いこ と、 食用油な どの油分の染込みがないこ と, 酸素バリ ア性を有する こ と、 異臭がまったく ない こ となどから、 このコ一ティ ング物は食 品用包装材料、 ト レーなどに適用可能である。 比較例 2 6 と して、 D P c 3 1 0 のセルロースノ苛性ソーダ水溶液を同じ 方法でコーティ ングしたが透水性、 耐油性及び酸素バリ ア性 は実施例 3 4 と同程度ながら、 D P c が低く 強度が低いため 水中などで摩擦する と、 細片状に崩れて剥離するため実用的 ではない。
また、 得られた ドープを 5 0 g Zm2のク ラ フ ト紙にセル ロース換算で 0 . 2 重量% (対紙) 付着するよう グラビアコ 一夕一でコーティ ングし、 9 0でで乾燥凝固した。 乾燥凝固 後のコーティ ング紙を十分水洗した後 (実施例 3 5 ). 、 また はクェン酸水溶液でアルカ リ分を中和した後 (実施例 3 6 )
再度乾燥してコーティ ング物を得た。 得 られたコーティ ング 物のキ ッ ト値は実施例 3 5 および 3 6 においても 1 2以上で あ り 、 耐油性は最高 レベルであっ た。 付着量が少ない、 実施 例 3 6 では水洗の必要もないため、 通常のグラ ビア塗工機が 使用できる利点も ある。 比較と して 日本国王子製紙製の耐油 紙 ( 5 4 g m 2、 比較例 2 7 ) の耐油性を同方法で測定し たと こ ろキッ ト値は 9 であ り 、 実施例 3 5 、 3 6 よ り耐油性 は低かっ た。 表 7
付着量 透水性(リット キッ ト値 酸 素 透過性 水 中 で (対紙%) ル / atm - mz · (ml/atm · m2 - の 耐 擦 hr) 24hr) れ性 高密度紙 1 3 6 0 1以下
実施例 3 4 5 0. 1 0 1 2以上 4 0 〇 実施例 3 5 0 . 2 1 0 0 1 2以上 〇 実施例 3 6 0 . 2 1 2 5 1 2以上 〇 比較例 2 6 5 0. 1 6 1 2以上 1 1 0 X 比較例 2 7
(王子製紙 9
製耐油紙)
産業上の利用可能性
本発明のセルロ ース ドープは、 重合度 ( D P c ) の比較的 高いセルロースを高濃度に含む場合でも安定であ り 、 ゲル化 を起こ さない。 また、 本発明のセルロース ドープを用いる と 実用に耐える機械的強度を有する再生セルロース成形品 (例 えば、 繊維体、 平面上フ ィ ルム、 チューブ状フ ィ ルム、 中空 糸、 粒子、 スポンジ状物またはコーティ ング) を、 二硫化炭 素、 銅アンモニアなどの有害物質を大量に用いる こ となく 、 また、 特殊な成形装置を用いる こ とな く 、 容易で安定的に製 造する こ とができる。 したがっ て、 本発明のセルロース ド一 プは工業的に極めて有利である。