臓器線維化抑制剤 技術分野
本発明は新規臓器線維化抑制剤 (腎線維化抑制剤、 腌線維化抑制剤、 肺線維化 抑制剤、 血管線維化抑制剤、 皮膚線維化抑制剤、 骨髒線維化抑制剤、 肝線維化抑 制剤等) 、 より詳しくはヒスチジン明を有効成分として、 好ましくはシスティン及 び/又はシスチンと、 ヒスチジンとを有田効成分として、 含有する臓器線維化抑制 剤に関する。 臓器の線維化を有効に抑制し、 上記有効成分が全てアミノ酸の一成 分であり経口投与又は経口摂取が可能であるところから、 線維化に起因する各種 臓器疾患用の薬剤、 特に肝線維症、 肝硬変等肝臓疾患用薬剤 (医薬品) の形態で 、 また、 保健機能食品、 病者用食品等の飲食品に使用された形態で実施すること ができる。
更に、 本発明は臓器線維化抑制方法 (生体内の臓器線維化に起因する疾患の治 療、 改善、 進展防止、 予防等のための処置法等含む。 ) 、 前記有効成分の臓器線 維化抑制剤 (医薬品、 飲食品等の形態を含む。 ) 製造への使用、 前記複数の有効 成分を使用する場合それ等有効成分の臓器線維化抑制剤としての組み合わせ或い はそれ等の臓器線維化抑制方法への使用のための組み合わせ等に関する。
背景技術
臓器線維化抑制剤、 特に肝線維症、 肝硬変等肝臓疾患用薬剤として有効な薬剤
(予防、 改善及び Z又は治療剤) は見当たらない。
例えば、 肝硬変はウィルス性やアルコール性肝炎等の慢性肝疾患の終末像であ るばかりでなく、 高率に肝細胞癌に進行することから、 合併症 (腹水 ·浮腫、 脳 症、 黄疸) に対する既存療法の他に、 肝硬変の病因である肝線維化に対する直接 的な治療法の開発が望まれている。
肝線維化はウィルスやアルコール等の外的要因若しくは自己免疫異常が関与す
る内的要因によって惹起される肝細胞壌死と、 肝機能を維持するための肝再生と のパランスが崩れた場合に、 肝臓組織を修復するためにコラーゲン等の細胞外マ トリックスが過剰沈着した結果と考えられている。 細胞レベルでは、 肝実質細胞 の障害、 壊死がクッパー細胞や内皮細胞等を活性ィヒし、 活性化されたクッパー細 胞ゃ内皮細胞等から TN F— a、 T G F— 、 P D G Fが放出される。 次に、 そ れ等の因子が、 肝線維化の主役とされている星細胞を活性化し、 細胞増殖とコラ —ゲンの合成が惹起されるものと考えられている。
更に、 肺、 腎、 滕、 皮膚等の臓器においても、 肝同様に、 各々の臓器に存在す る線維芽細胞や各臓器に特異的な間質系細胞 (腎メザンギゥム細胞、 膝星細胞等 ) が各種サイト力インの刺激により、 増殖、 細胞外マトリ ックスの合成異常を呈 することにより、 臓器線維症が引き起こされるものと考えられている。
そこで、 肝線維化に対する直接的で著効を示す薬剤の開発が求められている。 更に、 それ以外の各種の臓器線維化に有効な薬剤の開発が同様に求められている
発明の開示
1 . 発明が解決しょうとする課題
本発明が解決しょうとする課題は、 臓器線維化抑制作用、 特に肝線維化抑制作 用を著しく示す成分を開発し、 これを使用し肝臓等各種臓器疾患用薬剤等の医薬 品のみならず、 保健機能食品、 病者用食品等飲食品に使用した形態でも適用可能 な薬剤を提供することにある。
2 . 課題を解決するための手段
本発明者等は上記課題を解決すべく、 鋭意検討を進めた結果、 ヒスチジン (L 一ヒスチジン、 D—ヒスチジン、 D L—ヒスチジン等) が前記臓器線維化抑制作 用、 特に肝線維化抑制作用を著しく示し、 これを有効成分に使用すると肝臓疾患 等の各種臓器疾患用薬剤等の医薬品のみならず、 保健機能食品、 病者用食品等飲 食品に使用した形態でも適用できること、 更に上記ヒスチジンに対し特にシステ
イン (L一システィン、 D—システィン、 D L—システィン等) 及び/又はシス チン ( L—シスチン、 D—シスチン、 D L—シスチン等) を有効成分として併用 することにより、 より強い線維化抑制作用を示すこと等を見出し、 これ等の各種 知見に基づいて本発明を完成するに到った。
即ち、 本発明は、 一つの形態として、 ヒスチジンを有効成分として、 好ましく はシスティン及び/又はシスチンと、 ヒスチジンとを有効成分として含有するこ とに特徴を有する腎線維化抑制剤、 脖線維化抑制剤、 肺線維化抑制剤、 血管線維 化抑制剤、 皮膚線維化抑制剤、 骨髄線維化抑制剤、 肝線維化抑制剤等の臓器線維 化抑制剤に存する。 システィン、 シスチン及びヒスチジンはそれぞれ、 L一体、 D—体、 D L—体何れも使用可能である。 また、 システィン、 シスチン及びヒス チジンはそれぞれ、 遊離体のみならず、 塩の形態でも使用することができる。 塩 の形態には酸付加塩や塩基との塩等を挙げることができ、 システィン、 シスチン 及びヒスチジンの医薬品又は飲食品として許容される塩を選択することが好まし レ、。 システィン、 シスチン及びヒスチジンに、 それぞれ付加して医薬品又は飲食 品として許容される塩を形成する酸としては、 例えば、 塩化水素、 臭化水素、 硫 酸、 リン酸等の無機酸、 酢酸、 乳酸、 クェン酸、 酒石酸、 マレイン酸、 フマル酸 又はモノメチル硫酸等の有機酸が挙げられる。 システィン、 シスチン及びヒスチ ジンの医薬品又は飲食品として許容される塩基との塩の例としては、 例えば、 ナ トリウム、 カリウム、 力ルシゥム等の金属の水酸化物或いは炭酸化物や、 アンモ ユア等の無機の塩基との塩、 エチレンジァミン、 プロピレンジァミン、 エタノー ノレアミン、 モノアノレキノレエタノーノレアミン、 ジァノレキノレエタノーノレアミン、 ジェ タノールァミン、 トリエタノールアミン等の有機の塩基との塩が挙げられる。 この臓器線維化抑制剤の使用に関しては線維ィヒに起因する臓器の各種疾患用薬 剤として使用することができる。 例えば、 肝臓疾患用薬剤 (肝臓疾患の予防、 改 善及び Z又は治療等に使用する薬剤。 ) 、 特に慢性肝炎、 肝硬変及び肝臓癌等医 薬品の形態で使用することができるし、 保健機能食品、 病者用食品等飲食品に使 用した形態で使用することもできる。
前記ヒスチジンを少なくとも含み、 各種臓器のために線維化を抑制する作用、
例えば肝線維化抑制作用を発現する薬剤 (飲食品に使用した形態を含む。 ) は本 発明に該当し、 従って本発明の目的や本発明で奏する作用 (効果) を阻害しない 範囲で、 前記システィン及び/又はシスチン等や、 或いは各種必要なその他の成 分等を随時配合、 使用することもできる (例えば、 後述の補助剤、 担体等参照。
) 0
尚、 真田等は、 L—ヒスチジンを投与したラットにおいて、 D—ガラクトサミ ン投与による肝障害が軽減されることを報告している (Biosci. Biotechnol. Bi ochem., vol. 63,319-322,1999年参照。 ;)。 しかし、 ヒスチジンに肝線維化等の臓 器線維化抑制作用があることは示されておらず、 示唆も無い。
更に、 ヒスチジンについて、 星細胞への直接作用による活性化抑制や、 例えば 肝線維化抑制作用等については検討されていない。
システィン及び/又はシスチンを併用する場合、
ンと、 ヒスチジンとの含有比率 (モル比率) については、 遊離体換算- ン及び/又はシスチン: ヒスチジン = 1 : 0 . 1〜1 0、 好ましくは 1 : 0 . 2 〜8、 より好ましくは 1 : 0 . 3〜6になるように各成分を配合することが望ま しい。 この場合、 シスチンについてはシスティンのモル比に換算して算定すると よい。
ば 2種製剤等にそれぞれを含めてセットで使用してもよい。 従って、 有効成分に 使用する全てのアミノ酸を同一製剤或いは同一飲食品等の形態に含めて使用する こともできるし、 有効成分に使用するアミノ酸を二つ又はそれ以上の形態、 例え ば二つ又は三つの製剤及び Z又は飲食品等の形態に分離して使用することもでき る。 例えば、 一つのアミノ酸が医薬品で、 他のアミノ酸が飲食品というような形 態での使用も可能である。
本発明は、 別の形態として、 臓器線維化抑制剤に使用することに特徴を有する システィン及び/又はシスチンと、 ヒスチジンとの組み合わせにも存する。
組み合わせる複数の有効成分を、 代表的には混合状態で一つの形態、 例えば合
剤として使用することができる。 また、 システィン又はシスチンと、 ヒスチジン とを、 それぞれ分離した形態、 例えば別形態の製剤或いは飲食品の形態で;又は
、 システィン、 シスチン及びヒスチジンの 3種それぞれを、 若しくはその何れか 2種混合物と他の 1種とを、 相互に分離した形態、 例えば別形態の製剤或いは飲 食品の形態で使用することもできる。
但し、 システィン、 シスチン及びヒスチジンは、 それぞれ L一体、 D—体及び D L一体何れでもよく、 また塩の形態でもよい。
一つの有効成分について非経口製剤で、 他の有効成分について経口製剤である ような組み合わせや、 一つが医薬製剤で、 他が飲食品の形態であるような組み合 わせや、 一つが非経口製剤、 もう一つが経口製剤、 三つ目の有効成分については 飲食品であるような 3種成分の組み合わせも可能である。
この発明は前記本発明の臓器線維化抑制剤を含むので、 本明細書中前記本発明 についての説明は全てこの発明の説明に適用される。 この発明は有効成分単位で 別々に医薬品として或いは飲食品として製品化されたものをも含み、 それぞれ同 時に摂取又は投与する前記本発明に対し、 この発明においては本発明で使用する 有劾成分の 1種又は 2種をそれぞれ別々の摂取又は投与形態で、 また時と所を異 にして摂敢又は投与できるようにしたものであり、 前記本発明に対する明細書の 説明を参考に、 同様にこの発明を実施することができる。
尚、 このようなシスティン及び/又はシスチンと、 ヒスチジンとの併用による 臓器線維化抑制作用についてはこれまでに報告されておらず、 また示唆も無レ、。 本発明は、 別の形態として、 ヒスチジンを、 好ましくはシスティン及び/又は シスチンと、 ヒスチジンとを生体内に投与することに特徴を有する臓器線維化抑 制方法 (臓器線維化に起因する疾患の治療、 改善、 進展防止、 予防等のための処 置法等含む。 ) に存する。 有効成分として上記複数のアミノ酸を生体内に投与す る場合、 これ等複数のアミノ酸の相対的な投与時期には特に制限は無い。 例えば 、 これ等アミノ酸を全て同時に投与することもできるし、 その中の 1種のみ別個 に投与したり、 又は 3種を使用する場合 3種に分離して別々に時間をおいて生体 内に投与することもできる。
但し、 ヒスチジンは L—体、 D—体及び D L—体何れでもよく、 また塩の形態 でもよい。 システィン及びシスチンは、 それぞれ L一体、 D—体及び D L—体何 れでもよく、 またそれぞれ塩の形態でもよい。
当該投与の形態としては、 前記本発明の臓器線維化抑制剤の中から選択するこ とができる。
本発明は、 更に別の形態として、 ヒスチジン、 好ましくはシスティン及び Z又 はシスチン、 並びにヒスチジンの臓器線維化抑制剤製造への使用に存する。 但し、 シスディン、 シスチン及びヒスチジンは、 それぞれ L _体、 D—体及び D L -体何れでもよく、 またそれぞれ塩の形態でもよい。
併用する場合複数の有効成分を、 代表的には混合状態で一つの形態、 例えば合 剤として使用することができる。 また、 併用するシスティン及び Z又はシスチン と、 ヒスチジンとをそれぞれ分離し、 又は別の形態、 例えば複数の医薬品製剤及 び/又は飲食品等の別形態で使用してもよい。 上記有効成分として使用するアミ ノ酸の当該臓器線維化抑制剤製造への使用形態としては、 前記本発明の臓器線維 化抑制剤の中から選択することができる。 図面の簡単な説明
[図 1 ]
図 1は、 実施例 1において、 肝ハイドロキシプロリン (Hyp) 量を測定した結 果を示す。
normal:無処置群;
平均値 +標準偏差 normal (N=4) 、 Control (N=7) 、 His投与群 (N=8) ; * : p < 0 . 0 5 Dunnet多重検定。
[図 2 ]
図 2は、 実施例 2において、 血小板由来増殖因子刺激による星細胞の DN A合 成能を測定した結果を示す。
平均値士標準偏差 (N=3) ; * : p < 0 . 0 5 T検定。
[図 3 ]
図 3は、 実施例 3において、 血小板由来増殖因子刺激による星細胞の DN A合 成能を測定した結果を示す。
平均値 +標準偏差 (N=3) ; * : p<0. 05 T検定。
[図 4]
図 4は、 実施例 4において、 血小板由来増殖因子刺激による星細胞の DNA合 成能を測定した結果を示す (ラット肝星細胞 PDGF刺激 DNA合成能に対する C y s及び H i sの配合効果) 。
平均値 +標準偏差 (N=3) ; * : pく 0. 05 T検定。
[図 5]
図 5は、 実施例 5において、 細胞への B r d U取り込み量の測定結果を示す。 図 5 a : PD G F添カ卩;図 5 b : F C S添加。
平均値 +標準偏差 (N=3) ; * : p<0. 05 T検定。
[図 6]
図 6は、 実施例 6において、 細胞への B r dU取り込み量の測定結果を示す ( FCS添加) 。
平均値 +標準偏差 (N=3) ; * : p<0. 05 T検定。 発明の実施の形態
以下、 本発明の実施の形態について説明する。
(臓器線維化抑制剤)
本発明の薬剤においては, 各種臓器の線維化を抑制する作用、 好ましくは肝線 維化抑制作用を付与するために有効成分に、 ヒスチジンを使用し、 好ましくはシ スティン及び/又はシスチンと、 ヒスチジンとを使用し、 医薬品の形態や飲食品 に使用した形態で実施することができる。
適用の対象としては、 肝臓に関しては、 肝線維化抑制作用を利用してウィルス 性、 アルコール性等の慢性肝炎、 その他の肝炎 (非アルコール性脂肪性肝炎 (NA SH) 等) 、 肝線維症、 肝硬変、 及び肝臓癌等、 肝臓疾患を予防、 改善及び/又は 治療する動物、 特にヒ ト (肝臓疾患患者等) であり、 またその作用を利用して飲
食品、 飼料等を通じて肝臓の働きを強化、 維持することを期待する健常者、 家畜 等である。
腎臓に関しては、 その線維化抑制作用を利用して、 糖尿病性腎症、 糸球体腎炎 、 腎硬化症等、 腎線維化を示す腎疾患を予防、 改善及び/又は治療する動物、 特 にヒト (腎疾患患者等) であり、 またその作用を利用して、 飲食品、 飼料等を通 じて腎臓の働きを強化、 維持することを期待する健常者、 家畜等である。
脖臓に関しては、 その線維化抑制作用を利用して. 脖線維症等、 勝疾患を予防 、 改善及び/又は治療する動物、 特にヒト (縢疾患患者等) であり、 またその作 用を利用して、 飲食品、 飼料等を通じて脖臓の働きを強化、 維持することを期待 する健常者、 家畜等である。
肺に関しては、 その線維化抑制作用を利用して、 肺線維症等、 肺疾患を予防、 改善及び Z又は治療する動物、 特にヒト (肺疾患患者等) であり、 またその作用 を利用して、 飲食品、 飼料等を通じて肺臓の働きを強化、 維持することを期待す る健常者、 家畜等である。
血管に関しては、 その線維化抑制作用を利用して. 動脈硬化症、 P T C A施行 やシャント挿入等、 血管再開処置後の再挟窄等の線維性血管変性疾患を予防、 改 善及び/又は治療する動物、 特にヒト (血管変性疾患患者等) であり、 またその 作用を利用して、 飲食品、 飼料等を通じて血管の働きを強化、 維持することを期 待する健常者、 家畜等である。
皮膚、 骨髄又はその他の臓器に対しては、 その線維化抑制作用を利用して、 例 えば、 強皮症、 ケロイド、 骨髄線維症、 全身性硬化症等の疾患を予防、 改善及び /又は治療する動物、 特にヒト (線維性臓器変性疾患患者等) であり、 またその 作用を利用して、 飲食品、 飼料等を通じて該当する臓器の働きを強化、 維持する ことを期待する健常者、 家畜等である。
システィン、 シスチン及びヒスチジンを使用する場合の入手経路について、 調 製する場合その調製法は特に困難は無く、 何れも従来技術に基づいて容易に行う ことができるし、 それ等の L—体、 D—体、 D L—体については市販品が存在す るので、 これ等を購入使用するのが簡便である。
システィン、 シスチン及びヒスチジンを塩の形態で使用する場合には、 従来か ら知られている造塩工程を利用して遊離体から目的とする塩 (医薬品又は飲食品 として許容される塩) を容易に調製することができる。 前記の通り各種の塩、 例 えば、 塩酸塩、 硫酸塩、 リン酸塩、 クェン酸塩、 ナトリウム塩、 ジエタノールァ ミン塩等を挙げることができる。
本発明で使用する前記有効成分を各種の薬剤、 例えば肝臓疾患用薬剤として使 用する場合、 製剤の形態には特に制限は無く、 経口剤でも非経口剤 (注射剤) で もよい。 飲食品に使用する場合、 通常は経口摂取となるが、 経口ではない特別 ( 経管等) の摂取手段も考えられる。 本発明で使用する全有効成分を同時に含む製 剤の形態でも、 また前述の如く有効成分のそれぞれを別々の製剤に調製すること もできる。
有効成分の使用量については、 例えば肝臓疾患用薬剤 (医薬品製剤) に使用す る場合、 例えば患者の症状やその程度、 剤形の種類等により適宜選択すればよい 。 ヒスチジンを投与するとき、 経口投与の場合で通常、 ヒスチジンの遊離体換算 で 1日当たり好ましくは 1 0 m g〜5 0 g程度、 より好ましくは 1 0 0 m g〜2 0 g程度、 更に好ましくは 1〜1 0 g程度使用することができる。 また、 静脈等 への注射剤として使用する場合、 前記経口投与用製剤に使用する場合の前記有効 成分使用量の二十分の一〜二分の一程度の使用量で十分である。 一方、 システィ ン及び/又はシスチンと、 ヒスチジンとを併用投与するとき、 経口投与の場合で 通常、 システィンとヒスチジンとの 1 : 0 . 1〜1 0 (モル比、 遊離体換算) の 混合組成の場合、 遊離体換算で 1日当たり好ましくは 1 0 m g〜5 0 g程度、 よ り好ましくは 1 0 0 m g〜2 0 g程度、 更に好ましくは 1〜1 0 g程度使用する ことができる。 また、 静脈等への注射剤として使用する場合、 前記経口投与用製 剤に使用する場合の前記有効成分使用量の二十分の一〜二分の一程度の使用量で 十分である。 尚、 シスチンをシスティンに代えて、 又はシスティンと共に使用す る場合、 前記システィンの使用量を参考に対応する使用量を容易に選択すること ができる。 当然のことながら、 ヒスチジン単独投与の場合に比較して、 ヒスチジ ン等との併用投与の場合にはより効果が高いので、 より少ない投与
量で前者の場合と同一の効果を上げることができる。
上記有効成分の使用量に関し、 勿論、 重篤な場合には更に増量することもでき る。 投与の回数、 時期については、 数日に 1回でも、 また 1日 1回でも可能であ るが、 通常は 1日当たり数回、 例えば 2〜4回に分けて、 好ましくは食後に投与 される。
一方、 飲食品に使用する場合、 上記経口投与量を基準にその有効成分の飲食品 中への配合量を決めることができる。
製剤の調製については、 薬理学的に許容し得る各種の製剤用物質 (補助剤等と して) を含むこともできる。 製剤用物質は製剤の剤形により適宜選択することが できる力 s、 例えば、 賦形剤、 希釈剤、 添加剤、 崩壌剤、 結合剤、 被覆剤、 潤滑剤 、 滑走剤、 滑沢剤、 風味剤、 甘味剤、 可溶ィ匕剤等を挙げることができる。 更に、 製剤用物質を具体的に例示すると、 炭酸マグネシウム、 二酸化チタン、 ラクトー ス、 マンュトール及びその他の糖類、 タノレク、 牛乳蛋白、 ゼラチン、 澱粉、 セル ロース及びその誘導体、 動物及び植物油、 ポリエチレングリコール、 及び溶剤、 例えば滅菌水及び一価又は多価アルコール、 例えばグリセ口ールを挙げることが できる。
本発明の薬剤は、 前述の如く公知の又は将来開発される様々な医薬製剤の形態 、 例えば、 経口投与、 経腸投与、 経皮的投与、 吸入投与等各種の投与形態に調製 することができる。 本発明の薬剤をこれら様々な医薬製剤の形態に調製するため には公知の又は将来開発される方法を適宜採用することができる。
これ等様々な医薬製剤の形態として、 例えば適当な固形又は液状の製剤形態、 例えば顆粒、 粉剤、 被覆錠剤、 錠剤、 (マイクロ) カプセル、 坐剤、 シロップ、 ジュース、 懸濁液、 乳濁液、 滴下剤、 注射用溶液、 活性物質の放出を延長する製 剤等を挙げることができる。
以上に例示した製剤形態にある本発明の薬剤には、 薬効を奏するに有効な量の 前記成分 (L一ヒスチジン、 並びに併用する場合 L一システィン/ L—シスチン 及び L一ヒスチジン等) を含有すべきことは当然のことである。
それ以外の成分を使用する場合でも、 これ等に基づき或いは知られている製剤
技術を利用して、 また各種の剤形に応じて必要な製剤を調製することができる。 一方、 飲食品への用途についても前記経口用薬剤その他の説明を参考にして容 易に実施することができる。
本発明の臓器線維化抑制剤で使用する有効成分をそれぞれ別々に製品化 (医薬 品製剤、 飲食品等) する場合や有効成分の 2種混合物と 1種成分とで別々に製品 化する場合 (本発明の前記組み合わせ) にも、 前記説明を基に同様に実施するこ とができる。
(その他の発明)
前記の通り本発明は、 それぞれ別の形態として、
(ィ) 臓器線維化抑制剤に使用することに特徴を有するシスティン及び/又は ヒスチジンとの組み合わせ、 或レ、は臓器線維化抑制剤としてのシス ヒスチジンとの組み合わせ;
(口) ヒスチジンを、 好ましくはシスティン及び/又はシスチンと、 ヒスチジ ンとを生体内に投与することに特徴を有する臓器線維化抑制方法 (臓器線維化に 起因する疾患の治療、 改善、 進展防止、 予防等のための処置法等含む。 ) ;
(ノ、 ) ヒスチジンの、 好ましくはシスティン及び z又はシスチン、 並びにヒス チジンの臓器線維化抑制剤製造への使用;等
にも存する。
これ等の発明については、 何れも前記本発明の臓器線維化抑制剤についての説 明や、 後述の実施例等に基づいて、 また必要により従来から知られている技術を 参考にすることにより、 容易に実施をすることができる。 好適な実施の形態
以下に、 実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、 本発明はこれ 等の実施例に限定されるものではない。
(実施例 1 )
9週齢 S D系雄性ラットに 1 0 mg/kgのジメチルニトロソァミン (DMN) を週 3 回腹腔内に 3週間投与して肝線維ィ匕を惹起した。 市販飼料又は、 被験物として L
一ヒスチジン (His) を、 それぞれ 0 . 2、 0 . 5、 1 . 0、 及び 2 . 0 %添カロ した実験食を、 DMN投与開始日より供餌した。 DMN投与開始 2 1日目に肝臓 を採取し、 肝線維化の指標として肝臓中ハイドロキシプロリン (Hyp) 量をアミ ノ酸分析機を用いて測定した。 この結果を図 1に示した。 この図 1から明らかな ように、 DMNの投与によりおよそ 6倍に増加した肝臓中の H y pは、 H i sの 経口投与により有意に減少した。
(実施例 2 )
ウィスター (Wistar) 系雄性ラット肝より、 プロナーゼ E、 コラーゲナーゼ肝 灌流法にて星細胞を単離 ·培養し、 8 _ 1 4日目の星細胞を 1 0 %ゥシ胎児血清
(FCS) 含有培地で一晩培養後、 0 . 1 % F C S含有培地に交換し更に 4 8時間 培養した。 その後、 被検物質として L一ヒスチジンを 1〜3 OmMになるように添 加し、 更に、 血小板由来増殖因子 (PDGF) を終濃度 2 5 ng/mlとなるように加え 、 2 4時間星細胞を培養した。 培養終了 6時間前にプロモデォキシゥリジン (Br dU) を培養系に加え、 培養終了後、 細胞への B r d U取り込み量を E L I S A法
(enzyme-linked immunosorbent assay法ノ で則疋'し 7こ。 コントローノレとして培 地中に P D G F (終濃度 25ng/ml) のみを添加した。 コントロールの B r d U取 り込みを 1 0 0 %としたときの各群の値を図 2に示した。 その結果、 L-ヒスチ ジンは P D G Fによる星細胞の D N A合成を用量依存的に強く抑制した。
(実施例 3 )
実施例 2と同様の方法により、 L一ヒスチジンと D _ヒスチジン (それぞれ、 30mM) の星細胞 DNA合成に対する効果を比較した。 コントロール群の B r d U 取り込みを 1 0 0 %としたときの各群の値を図 3に示した。 その結果、 L-ヒス チジン及び D-ヒスチジン共に P D G Fによる星細胞の D N A合成を強く抑制し 、 その抑制は同程度であった。
(実施例 4 )
ウィスター (Wistar) 系雄性ラット肝より、 プロナーゼ E、 コラーゲナーゼ肝 灌流法にて星細胞を単離 '培養し、 8— 1 4日目の星細胞を 1 0 %ゥシ胎児血清 (FCS) 含有培地で一晩培養後、 0 . 1 % F C S含有培地に交換し更に 4 8時間
培養した。 その後、 被検物質として L—システィン、 L一ヒスチジン或いは L一 システィンと L—ヒスチジンの組成物を添加し、 更に、 血小板由来増殖因子 (PD GF) を終濃度 25ng/mlとなるように加え、 24時間星細胞を培養した。 培養終 了 6時間前にプロモデォキシゥリジン (BrdU) を培養系に加え、 培養終了後、 細 胞への B r dU取り込み量を EL I SA法 (enzyme -丄 inked immunosorbent assa y法) で測定した。 コントロールとして培地中に PDGF (終濃度 25ng/ml) のみ を添加した。 コントロールの B r dU取り込みを 100%としたときの各群の値 を図 4に示した。 この結果から、 L一システィン、 或いは L-ヒスチジンそれぞ れ単独の場合に比較して、 L—システィン及び L—ヒスチジンの組成物は PDG Fによる星細胞の DN A合成を強く抑制していることが理解される。
(実施例 5 )
ヒ ト正常肺線維芽細胞 (HLF- 1細胞) を 10%ゥシ胎児血清 (FCS) 含有培地で ー晚培養後、 0. 1 % F C S含有培地に交換し更に 24時間培養した。 その後、 被検物質として L—ヒスチジン (His) を 10又は 3 OmMになるように添カロし、 更に、 血小板由来増殖因子 (PDGF) を終濃度 25ng/ml或いは FCSを終濃度 5 %となるように加え、 24時間 HLF- 1細胞を培養した。 培養終了 6時間前にプロ モデォキシゥリジン (BrdU) を培養系に加え、 培養終了後、 細胞への B r d U取 り込み量を EL I SA法 (enzyme— linked immunosorbent assay法ノ で ί則疋'しに 。 コントロールとして培地中に PDGF (終濃度 25ng/ml) 或いは FCS (終濃 度 5%) のみを添加した。 コントロールの B r dU取り込みを 100%としたと きの各群の値を図 5に示した。 その結果から、 L一ヒスチジンは PDGF或いは F C Sによるヒ ト正常肺線維芽細胞の DN A合成を強く抑制することが分かった
(実施例 6 )
ヒト腎メザンギゥム細胞を 10%ゥシ胎児血清 (FCS) 含有培地で一晩培養後 、 0. 1%FCS含有培地に交換し更に 24時間培養した。 その後、 被検物質と して L—ヒスチジン (His) を 10又は 30 ηιΜになるように添カロし、 更に、 FC Sを終濃度 5 %となるように加え、 24時間メザンギゥム細胞を培養した。 培養
終了 6時間前にプロモデォキシゥリジン (BrdU) を培養系に加え、 培養終了後、 細胞への B r d U取り込み量を E L I S A法 (enzyme-linked immunosorbent as say法) で測定した。 コント口ールとして培地中に 5 % F C Sのみを添加した。 コントロールの B r d U取り込みを 1 0 0 %としたときの各群の値を図 6に示し た。 その結果から、 L -ヒスチジンは F C Sによるヒト腎メザンギゥム細胞の D N A合成を強く抑制することが分かった。 発明の効果
本発明においては、 ヒスチジンを有効成分として、 好ましくはシスティン及び /又はシスチンと、 ヒスチジンとを有効成分として含有する優れた、 臓器線維化 抑制剤、 特に肝線維化抑制剤を提供し、 例えば慢性肝炎、 肝線維症、 肝硬変及び 肝臓癌等肝臓疾患用の薬剤 (医薬品) の形態で使用できる外に、 食品の分野でも 、 特に有効成分のアミノ酸に L—体を使用する場合保健機能食品、 病者用食品等 飲食品に使用した形態でも適用することができる。
ヒスチジンは、 特に好ましくはシスティン及び Z又はシスチンとの併用により 、 臓器線維化、 特に肝線維化抑制作用を著しく示し、 故にヒスチジンを、 また併 用する場合両者を同時に又は別々に、 医薬品の形態や飲食品に使用した形態で目 的とする有効成分として使用することができる。
本発明によれば、 有効成分を併用する場合更にシスティン及び/又はシスチン と、 ヒスチジンとがそれぞれ分離した形態、 例えば別形態の製剤或いは飲食品の 形態で;又は、 システィン、 シスチン及びヒスチジンの 3種それぞれが、 若しく はその 2種混合物と他の 1種とが相互に分離した形態、 例えば別形態の製剤或い は飲食品の形態でも提供することができる。
更に、 本発明は、 臓器線維化抑制方法 (生体内の臓器線維化に起因する疾患の 治療、 改善、 進展防止、 予防等のための処置法等含む。 ) 、 前記有効成分の臓器 線維化抑制剤 (医薬品、 飲食品等の形態を含む。 ) 製造への使用、 前記複数の有 効成分を使用する場合それ等有効成分の臓器線維化抑制剤としての組み合わせ或 いはそれ等の臓器線維化抑制方法への使用のための組み合わせ等をも提供する。
従って、 本発明は医薬品、 食品分野等において広く実施することができ、 故に 工業的に極めて有用である。